自動車産業  |  リースに関する論点

質問3-1: 外注業者と締結した部品購入契約にリースは含まれますか?

(設例)
当社は、自動車部品の製造を外注しており、外注業者と部品の購入契約を締結しています。当該契約の概要は以下の通りです。

  • 部品は、当社向けにカスタマイズされているので、外注業者は部品の製造のために、別途金型を製作しなければならない。
  • 金型の製作費用は、契約期間に渡り部品の販売価格に上乗せして当社に請求される。なお、請求書の金額は金型の使用に係る対価と部品の対価を別々に表示している。
  • 当社は当初予定されていた最低発注量を引き下げる場合は、それによって、外注業者が被る損害を全て補填する(テイク・オア・ペイ)。
  • 当社はいつでも金型を買取りできるオプションを有している。このオプションを行使した場合も最低発注量に達しないことによる外注業者の損害を補填する。
  • 部品は当社にのみ独占的に販売される。契約期間は金型の経済的耐用年数と等しい3年間である。

この契約に、リースは含まれているのでしょうか?

答

3-1: 設例の契約は、リースを含むと考えられます。

(解説)
国際財務報告解釈指針(以下IFRIC)4号では、法的にリースの形式をとらない取引であっても、リース契約が含まれているかどうかについて、契約の実質をもとに決定することを要求しています。決定にあたっては、以下の点について評価しなければなりません(IFRIC4号6項)。

  • (1) 契約の履行が、特定の資産や資産群(「当該資産」)の使用に依存しているかどうか
  • (2) 契約により、当該資産を使用する権利が与えられるかどうか

上記(1)と(2)が満たされる場合には、法的にリースの形式をとっていない取引であってもIAS17号に規定されるリース取引として会計処理されることになります。また、(2)の使用権の移転の要件に関して、購入者(借手)に資産を使用する権利が与えられる場合とは、次のいずれかに該当する場合とされています(IFRIC4号9項)。

  • (a)購入者が当該資産を操業する能力または権利を有している。
  • (b)購入者は、当該資産からのアウトプットまたは他の用益のうち、無視できない量を取得または支配しつつ、原資産への物理的なアクセスを支配する能力または権利を有している。
  • (c)事実と状況から、契約期間中に当該資産によって製造または生成されるアウトプットまたは他の用益のうち無視できない量を、当該購入者以外の当事者が取得する可能性はほとんどないことが示唆され、当該アウトプットに対して購入者が支払う価格は契約上のアウトプット単位当りで固定されておらず、またアウトプットの引渡し時点におけるアウトプット単位当たりの現在市場価格とも等しくない。

さて、今回のケースでは、契約の履行のためには、特定の資産、すなわち金型の使用が必要であり、かつ、この金型はカスタマイズされていることから、この金型に代替する資産はありません。よって、上記①の要件が満たされています。
また、契約期間(=金型の耐用年数)にわたって生産される部品は、自動車メーカーである当社に独占的に販売されるため、当社以外の第三者が金型により製造される生産量のうち重要な部分を取得することはないと考えられます(したがって上記(a)に該当します)。また、アウトプットの価格は、契約上、テイク・オア・ペイの条項があるため、単位あたりで固定されておらず、直近の市場価値とも異なっています(したがって上記(c)に該当します)。さらに、当社はいつでも行使可能な金型の買取りオプションをもっており、上記(b)をも満たすと考えられます。
その結果、上記(2)の使用権の移転の要件も満たすと考えられます。

よって、当該部品購買契約には金型のリースを含むと考えられます。

質問3-2: 部品購入契約にリースを含む場合は、どのように会計処理になりますか?

(設例)
上記の外注業者との部品購買契約について、取引の詳細は以下のとおりです。この場合、どのようにリースを判定して会計処理すべきでしょうか。

  • 外注業者が支払った金型製作費用:3,000
  • 契約上の予定発注量300個(年間100個×3年)
    • 外注業者からの請求単価の内訳
    • 金型使用の対価:@10
  • 部品代金@20(予定発注量に達するまで)
  • 契約期間:3年(当期首から開始)

なお、当社の追加借入利子率は5%です。

答

3-2: 契約の開始時点で、リースに関する支払を、契約のその他の要素に対する支払から公正価値に基づいて区分し、IAS17号に従って会計処理します。

(解説)
IFRIC4号では、契約にリースが包含されている場合、リース部分に関する支払いとその他の対価について、契約の開始時点で公正価値をもとに区分することになります(IFRIC4号13項)。
今回のケースでは、外注業者は金型の使用にかかる対価を部品販売価格に上乗せしています。よって、金型のリースの対価は当該上乗せ部分と考えられ、最低支払リース料は、金型の使用にかかるコストの上乗せ分(@10)と、最低発注量(300個)を乗じた3,000になります。
また、リースの分類は、IAS17号に基づいて行われます。今回のケースでは、金型の経済的耐用年数は、契約期間に一致しており、金型は実質的に借手である当社しか使用できない特殊な性質を持っていることから、IAS17号におけるファイナンスリースに分類されると考えられます(10項)。

以上より、当社はファイナンスリースの借手で、かつ部品の購入者ということになります。この場合の会計処理は以下のとおりです。

<当初測定>

まず、契約期間の開始時に金型をその公正価値あるいは最低リース料の現在価値の低いほうで測定することになりますが、このケースでは、最低リース料の現在価値を資産計上額とします(なお、最低リース料が信頼性を持って分離できない場合は、公正価値で資産計上します)。最低リース料の現在価値は、追加借入利子率5%を使って、2,723と算定されますので、仕訳は
金型2,723/リース負債2,723
となります。

<減価償却>

金型は、経済的耐用年数か契約期間の短いほうで減価償却されますが、このケースでは、いずれも3年になりますので、3年で償却することになります。期末の減価償却の仕訳は、以下のとおりになります(定額法を前提)。
減価償却費908/金型908(*1) (*1)2,723÷3年=908

<当期支払>

リース部分に関する支払額は、支払利息とリース負債の返済とからなり、部品に関する支払いの部分は、仕入原価を構成します。
部品仕入2,000(*1) 支払利息136(*2) リース負債864(*3)/現金預金3,000 (*1)@20×100個、(*2)2,723×5%=136、(*3)@10×100個-136(支払利息)=864