第4回 減損及び公正価値測定(2010年1月~3月の動向)

1.金融危機関連プロジェクト

金融危機関連プロジェクトにおけるIAS第39号「金融商品:認識及び測定」の改訂作業については,本連載の第1回「金融負債の測定及びヘッジ会計」において説明しておりますが,3月の初めにはIASBがワークプランの見直しを行っております。この結果,第1フェーズ(分類と測定)における金融負債に関する公開草案,及び第3フェーズ(ヘッジ会計)の公開草案の公表時期が第2四半期に変更されています。また,認識の中止に関する再公開草案の公表が第2四半期または第3四半期に予定されており,公正価値測定については第3四半期に最終基準化が予定されています。 連載第4回の今回は,主として年明けから3月にかけてIASB及びFASBの合同会議で議論された金融危機関連プロジェクトの内容のうち,減損及び公正価値測定に関してなされている議論の内容について,公表されている資料の内容に基づいて紹介させていただきます。

2.減損

2009年11月に「償却原価と減損」に関する公開草案が公表されていますが,6月末がこれに対するコメントの受付期間となっています。この間,専門家諮問委員会(EAP, Expert Advisory Panel)が開催されています。EAPでの議論の内容はIASBのサイトにおいて公表されておりますが,IASB及びFASBに対してそれぞれのモデルを適用することがどのような運用上の課題を解決するのかを勧告することになるとされています。
このうち,2月25日及び26日の2日間にかけてロンドンにて開催された会合では,IASBモデルにおけるキャッシュフローの見積りにかかわる論点と,実効金利法にかかわる論点とにわけて議論されています。

第1のキャッシュフローの見積りにかかわる論点には以下のものが含まれています。
・予想損失アプローチの適用
・損失実績の取り扱い
・標準的な銀行における簡素化の方法
・マクロ経済見通しと経営者による判断
・実務上の課題
・バーゼルⅡ (金融機関についての自己資本規制)との関係

第2の実効金利法にかかわる論点には以下のものが含まれています。
・予想損失アプローチを利用したIASBモデルの適用についての簡便化されたアプローチの分析
・予想損失の測定における割引キャッシュフローアプローチ

EAPはこの後も毎月1回のペースでロンドン,ノーウォーク,北京で開催される予定です。

3.公正価値測定

次に,公正価値測定に関する1月から3月におけるIASB及びFASBの仮決定より
主な内容について,公表資料に基づきご紹介いたします。

(1)公正価値の定義
・「公正価値(fair value)」という用語を保持する。
・出口価格(exit price)として公正価値を定義する。

(2)市場がより活発でなくなった場合の公正価値の測定
・当該資産もしくは負債に関するアクティビティの量及びレベルに重要な下落が存在する場合を取り扱う。
・市場のアクティビティのレベルではなく,観測された取引価格が秩序あるものかどうかを重視する。
・また,取引が秩序あるものではないという証拠が存在しない限り,企業は観測可能な取引価格を検討すべきである。
・取引が秩序あるものかどうかを判断するための十分な情報が得られない場合には,公正価値を測定するためにさらに詳しい分析を実施する。

さらに,以下のいずれかの条件が存在する場合には,取引価格は当初認識時における資産もしくは負債の公正価値を表さない可能性がある,という仮決定を行いました。

・取引が関連当事者間で行われた。
・取引がやむを得ず行われた,もしくは売手は取引の価格を承認することを強制された。
・取引における会計単位は,資産,負債の公正価値が測定された会計単位とは異なる。
・取引が実施された市場は,その企業が当該資産を売却もしくは当該負債を譲渡するであろう市場とは異なる。

なお,公正価値測定プロジェクトの一部として,初日損益(‘day 1’gain or loss)の認識は取り扱わないことを仮決定しました。IASB及びFASBは将来の会合において,初日損益の認識について議論を行う予定です。

(3)公正価値による負債の測定
・負債の譲渡について,活発な市場における相場価格が存在しない場合,企業は負債の公正価値を以下のように測定する。

  • (a)同一の負債が資産として取引された場合の相場価格が利用可能である場合には,当該相場価格を使用する(Level 1測定)。
  • (b)(a)の相場価格が利用可能で無い場合には,類似の負債もしくは類似の負債が資産として取引された場合の相場価格を使用する(Level 2 測定)。
  • (c)観測可能なインプットが利用可能で無い場合には,(1)インカム・アプローチ(例:現在価値技法),(2)マーケット・アプローチ(例:市場参加者が同一の負債を譲渡するために支払うもしくは同一の負債を契約する場合に受け取るであろう金額を使う)などの評価技法を利用する。

・現在価値技法の適用においては,ある債務の引受けにあたって市場参加者が要求するであろう利益について説明を行う。
・負債の譲渡は,市場参加者である譲受人が取引の知識を融資,同一の債務を履行する能力があることを前提としていることを明確化する。
・企業は,負債がもし資産(負債に対応する資産,the correspondingasset)として取引された場合の公正価値が当該負債の公正価値を表すかどうかを決定しなければならない。企業が負債に対応する資産の公正価値が当該負債の公正価値を表さないと判断した場合,当該資産の公正価値が当該負債の公正価値を表さないならば修正をおこなわなければならない。
・負債に対応する資産が交換取引されているかどうかにかかわらず,当該資産の公正価値が当該負債の公正価値を表す。
・対応する資産の公正価値は,市場参加者が使用するであろう方法によって測定されるべきである。
・活発な市場における負債に対応する資産の市場相場価格に修正が必要とされない場合,当該負債の公正価値測定はLevel 1となる。

(4)評価が困難な資産及び負債の公正価値の測定 (時価のない資本性金融商品)
コンバージェンスされた公正価値測定の基準には,以下を含めないことを仮決定しました。
・評価が困難な資産及び負債の公正価値の測定 (時価のない資本性金融商品)に関する追加的ガイダンス。IASBは,将来の会合においてこのような資産及び負債への公正価値測定ガイダンスの適用を行う企業を支援するための教育資料の作成の必要性について議論を行う予定である。
・取得原価が公正価値の適切な見積りとなる場合についての指標。

(5)ポートフォリオ内の金融商品の公正価値の測定
相殺された市場リスクのポジション(例:金利リスク,通貨リスク,もしくはその他の価格リスク等)に対応する公正価値を確立するための基礎として仲値(mid price)を使用すること,およびネットされたオープン・リスク・ポジションを最も良く表す買値及び売値間の価格を適用することを企業に認めることにより,仲値を使用する公正価値測定の原則の除外規定を容認することを仮決定しました。この除外規定を利用するためには,企業は以下を実施しなければなりません。
・保有する金融商品を,その企業の文書化されたリスク管理戦略に準拠し,ネット・オープン・リスク・ポジションに基づいて管理する。
・ネット・オープン・リスク・ポジションを毎期首尾一貫した方法で管理する。

さらに,相殺される市場リスクは実質的に同じでなければならない,当該金融商品はその性質を同じくしていなければならない,当該金融商品は継続的に公正価値で測定されなければならないとしています。
また,債務不履行の際には相手方との相殺の法的執行権が存在する状況(例:マスター・ネッティング契約など)で金融商品の公正価値を測定する場合,企業は相手方の信用リスク・ポジションの相殺を考慮することが認められていることの明確化を仮決定しました。

(6)開示
公正価値測定に関する開示について,以下について仮決定しました。
・以下の原則に従って「種類(class)」を定義する。
・企業は資産及び負債の適切な種類を当該資産及び負債の性質,特徴,リスク,公正価値ヒエラルキー上の分類に基づいて決定すべきである。
・資産及び負債の種類は,しばしば財政状態計算書における表示項目よりも詳細な細分化を必要とすることがある。
・資産及び負債の適切な種類の決定には判断が必要とされる。
・非金融負債の債務不履行リスクの変動についての情報開示を要求しない。
・公正価値ヒエラルキーの中のレベル間の移動がいつ認識されるかの決定に関するポリシーの開示を要求する。
・当初認識後についてのみの公正価値測定に関する情報開示を要求する。
・各報告期間末に公正価値で認識される資産及び負債について,企業に対し,公正価値ヒエラルキーのレベル3内のアクティビティの調整,レベル1及び2間の移動についての情報の開示を要求する。 特定の状況のおいてのみ公正価値で再測定される資産及び負債については,企業はこの情報を開示する必要はない。
・財政状態計算書において公正価値で測定されていない項目に関して,公正価値ヒエラルキーの中のレベル別に公正価値情報を開示することを要求する。
・インプットもしくは公正価値の大幅な変動の重要性の評価に関するガイダンスを含めない。

さらにIASBは,企業に対し,中間財務報告において,金融商品の公正価値測定に関する情報開示を要求することを仮決定しました。将来の会合において,IASB及びFASBはレベル3の公正価値測定についての感応度分析の開示に関する規定をさらに検討する予定です。

こちらは、『週刊経営財務』2962号(2010年04月12日)にあらた監査法人企業会計研究会として掲載したものです。発行所である税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載·転用はご遠慮ください。