国際会計基準審議会(IASB)は、財政状態計算書における金融資産と金融負債の相殺に関する規定の一部を明確化するために、IAS第32号「金融商品:表示」の適用ガイダンスに対する改訂を公表しました。
しかし、財政状態計算書上の表示金額について、この明確化された相殺規定と米国会計基準(US GAAP)との間には依然として差異があります。その結果、IASBは、現行の相殺にかかわる開示を強化するため、米国財務会計基準審議会(FASB)との共同の規定を反映させた、IFRS第7号「金融商品:開示」に対する改訂も公表しています。これらの新しい開示規定は、IFRSを適用した財務諸表を作成する企業とUS GAAPを適用した財務諸表を作成する企業との比較を容易にすることを意図したものです。
この改訂は、IAS第32号の現行の相殺モデルを変更するものではありません。現行の相殺モデルは、企業が法的強制力のある相殺する権利を有しており、かつ資産と負債の純額決済を行うか、または、資産の実現と負債の決済を同時に行うかのいずれかの意思がある場合にのみ、財政状態計算書上の金融資産と金融負債を相殺することを企業に要求しています。
この改訂は、「相殺する権利は現時点において行使可能でなければならない」、すなわち、将来の偶発事象に左右されないことを明確にしています。さらに、通常の営業過程、そして債務不履行、支払不能、破産の場合においても、すべての契約当事者に対して法的強制力がなければなりません。
この改訂は、(i)信用リスクおよび流動性リスクを消去し、ならびに、(ii)単一の決済プロセスにおいて未収金と未払金を処理する、という特徴の両方を有する総額決済メカニズム(清算機関(クリアリングハウス)を通じて行われるもの等)が、純額決済と事実上同等であることも明確にしています。したがって、このような場合にはIAS第32号の相殺の要件を満たすことになります。
相殺の法的権利が一定の将来の事象(取引先の債務不履行など)の発生時にのみ強制可能なマスターネッティング契約は、引き続き相殺の要件を満たしません。
改訂された開示規定は、現在、IFRSやUS GAAPで要求されているよりも幅広い範囲の開示を要求することになります。この開示規定は、財政状態計算書上で相殺されている認識済みの金融商品、および、マスターネッティング契約または類似契約の対象になっている認識済みの金融商品(相殺されるか否かを問わない)に関する定量的情報に焦点を当てています。
IFRS第7号における、コンバージェンスの行われた相殺に関する開示規定は、2013年1月1日以後開始する事業年度から遡及適用される予定です。
しかし、IAS第32号の適用ガイダンスに対する明確化は、2014年1月1日以後開始する事業年度から遡及適用される予定です。
上述のような追加開示を要求されることから、当該改訂は主に金融機関に影響することが考えられます。しかし、相殺規則の適用対象となる可能性のある金融商品を保有する他の企業も影響を受けることになります。
経営者は、新しい開示規定の準備に必要な情報収集を開始しなければなりません。経営者は、さらに、IAS第32号の相殺に関する原則の明確化が現在の財政状態計算書上の相殺にどのような変更をもたらすかについて調査する必要があります。また、企業が利用している清算機関の決済プロセスが新規定に従っているかどうかを清算機関と共に確認する必要があるかもしれません。