FASBとIASBが公正価値測定と開示ガイダンスの整合を提案 ※In Brief(PwC US)
2010年07月01日
最新の動向
2010年6月29日、米国財務会計基準審議会(FASB)は公正価値測定と開示(Topic 820)―米国会計基準(US GAAP)と国際財務報告基準(IFRS)における、共通の公正価値測定と開示に関する規定の改訂―と題する公開草案を公表しました。国際会計基準審議会(IASB)は前回2009年5月に公正価値測定に関する公開草案を公表し、IASBの基準と米国の指針を整合させるために、FASBと共同で再審議を行いました。FASBは、再審議による変更案はUS GAAPに十分な影響を与えるため、公開草案を通じて財務報告に係る関係者からの意見を求める必要があると決定しました。またIASBも、開示に関する、当初の公開草案からの変更案には、公開草案の再公表とパブリック・コメントの募集が必要であると決定しました。その結果、IASBも「公正価値測定に対する測定の不確実性の分析の開示」と題する公開草案を2010年6月29日に公表しました。
主な規定
変更案の多くは、文言の変更や、既存の公正価値測定および開示に関するガイダンスの適用方法についてFASBの目的を明確化するものです。当変更案は、US GAAPとIFRSの間で首尾一貫した原則の適用を行うことを目的としています。変更案の多くは、実務への多大な影響はないと考えられているものの、FASBは公正価値の原則と開示を変更し結果として測定と開示を変更する可能性のあるいくつかの改訂についても提案しています。以下は、US GAAPに対する特筆すべき変更案の一部です。
最高かつ最良の使途の評価前提
現行のFASBガイダンスにおける、評価前提には、資産の最高かつ最良の使途について決定するための2つのアプローチ(「使用(in-use)」と「交換(in-exchange)」)があります。「使用」とは、主に他の資産と組み合わせてグループとして使用されることにより市場参加者に最大の価値をもたらす資産のための評価前提です。「交換」とは、主に単独で使用されることにより市場参加者に最大の価値をもたらす資産のための評価前提です。この公開草案によると、これらの用語は削除されることになります。
FASBは、「使用」の前提は、非金融資産の測定においてのみ当てはまると決定しました。その結果、公正価値で測定される金融資産およびすべての負債は、測定される会計単位に基づいて評価することのみが認められます。たとえば、当提案では、「使用」に基づく評価を行うために金融資産(持分証券等)を合算することは認めておらず、個別の持分証券に基づいて評価しなければなりません。これは、活発な取引の行われていない持分証券を合算し、大量取引によるプレミアムや割引の計上を行っている企業においては、変更点となります。これらのプレミアムや割引は、当提案の下では今後認められなくなります。
金融商品のポートフォリオの測定
当提案には、上述の評価前提に関する原則への免除規定が含まれています。この免除規定により、(総額ベースでなく)純額ベースで金融資産と金融負債グループの市場信用リスクを差引き管理している企業にて、これらの金融商品を純額ベースで公正価値測定することが可能となります。この免除規定を適用するためには、企業は所定の規準を満たす必要があります。これにより、現在、「使用」の評価前提を使用して測定されているものの、市場や信用リスクの相殺のない金融資産においては、変更点となる可能性があります。
大量保有要因
大量保有要因(blockage factor)とは、大量の証券を一度に売却することによる証券価値への影響を反映するために、証券価値の測定に適用される割引率です。US GAAPでは、活発な市場に市場価格のある金融商品の評価に大量保有要因を適用することを禁止しています。当提案は、さらに金融商品のすべての公正価値測定に対して割引率の使用を禁止しています。特定のプレミアムまたは割引は、一部の公正価値測定については、引き続き使用可能です。これはたとえば、会計単位が報告単位である場合に支配プレミアムを使用することや、非支配持分の評価に割引率を使用することなどです。
株主資本に分類される商品
FASBは、株主資本に分類される商品の公正価値の測定方法に関する新しいガイダンスを紹介しています。これは、たとえば、企業結合における対価として発行される資本持分に適用される可能性があります。FASBはこのガイダンスにより、これらの種類の商品の適用に関する首尾一貫性が改善されると考えています。
新しい開示規定
当提案では、追加の開示が求められます。重要な新開示規定は、レベル3の公正価値測定に対する測定の不確実性の分析に関する開示です(観察不能なインプットに基づく測定)。企業は今後、測定における観測不能なインプットを、合理的に代替可能なインプットに変更した場合の、レベル3の公正価値測定への影響を開示することが求められるようになります。
コンバージェンスは達成されるか?
大半の提案においては、コンバージェンスが達成される予定ですが、US GAAPとIFRSのガイダンスにおける、2つの主要な相違点は引き続き残ります。まず、IASBは初日の利得と損失の認識に関する既存の会計処理を変更するか否かについては取り扱っていません。現行のIFRSのガイダンスでは、利得もしくは損失を開始日に認識するために、観察可能なインプットに基づいて公正価値測定を行うことを求めています。これは、公正価値測定において観察不能なインプットが含まれている場合でもこれらの利得もしくは損失の認識を行う可能性のあるUS GAAPとは異なります。また、IASBは、純資産価値で計上する特定の投資の測定に関し、US GAAPで認められているのと同様の実務上の便宜をIFRSでは認めないことを決定しました。
影響を受ける企業は?
この提案は、資産、負債、または資本を公正価値で測定するすべての企業に影響を与えます。評価前提および大量保有要因の適用を改訂する規定は、金融機関、プライベート・エクイティ、および、類似の企業に対して、より著しい影響を与える可能性があります。
適用日は?
FASBは、当公開草案に対するフィードバックを検討後に、適用日を決定する予定です。当基準は適用期間の開始日より適用され、新規ガイダンス適用による差額に対しては期首剰余金の累積的影響の調整が要求されます。
次のステップは?
当コメントレターの期限は、2010年9月7日で、最終基準は2011年上旬に公表される予定です。
※In Brief(PwC US)について:PwC USが発行する「In Brief」の日本語訳です。FASBおよびIASBが公表する公開草案、最終化した会計基準に加え、PwC USの見解が記載されています。
「※In Brief(PwC US)」と記載されているもの以外は、Straight away(PwC Global)となります。