ベネズエラが超インフレに突入

2009年12月18日

何が問題となっているか?

ベネズエラのインフレ率は長年高く、11月30日までの過去3年間の累積インフレ率は現在100%を越えています。これにより、ベネズエラ経済は超インフレ経済と見なされ、在ベネズエラ企業は2009年12月31日終了事業年度の財務諸表にて、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」を適用する必要があります。IAS第29号では、ベネズエラに拠点のある子会社の財務諸表を親会社の連結財務諸表に含める前に修正再表示する必要もあります。今回のStraight Awayでは、なぜベネズエラが超インフレに陥ったのか、また、今後の財務報告に及ぼす結果について説明します。

なぜベネズエラは超インフレとなったのか?

量的要因

IAS第29号は、3年間の累積インフレ率が100%もしくは100%に近づいた場合、経済が超インフレになったことを示す指標となると記載しています。在ベネズエラ企業は、以前は消費者物価指数(CPI)を使用してインフレ率を測定していましたが、当該CPIはカラカスとマラカイボの都市のみが対象となっていました。当該CPIを使用した3年間の累積インフレ率は、2009年10月末時点で100%を超えていました。ベネズエラ全土を対象とした National Consumer Price Index(NCPI)が開発されたものの、この指標は2008年1月1日以降のデータしかありませんでした。企業によっては、NCPIとCPIを融合した指数を使用してインフレを測定していますが、この指標を使用した3年間の累積インフレ率は2009年11月末時点で101%となっています。


質的要因

IAS第29号では、経済が超インフレ下にあるかどうかを判断するために多くの質的要因を検討することを同時に求めています。ベネズエラのケースの質的特徴は以下の通りです。

  • ベネズエラ国民は、米ドルもしくは他の交換可能な通貨による貯蓄を好む。
  • 米ドルとの為替レートは政府により1米ドルあたり2.15ボリバルで固定されており、2005年から変わらない。ただし、公定為替レートでの米ドルの使用は、政府が決定した物品及びサービスの一覧のものに限られている。
  • 公定為替レートによる米ドルの取得の遅延や、米ドルを使用した輸入項目の公式一覧表からいくつかの商品を取り除いたことにより、並行為替市場(公的取引外で交換可能な通貨を購入する法的メカニズム)を使用した取引が増加した。並行市場での為替レートは現在、1米ドルあたりおよそ6ボリバルである。
  • ベネズエラの多くの価格や取引は、並行為替レートを使用して米ドルで計算される。
  • 売上高や仕入高は、通常、リスク保護のため、公的インフレ率よりも高めのマージンを設定した並行為替レートを使用して計算される。
  • 一部の物品やサービスの価格をコントロールすることによりインフレ率を監視レベルに保っているため、多くの価格をインフレ指標と連動させている。利率は政府により設定され、高レベルで管理されているが、インフレ率には特に連動されていない。インフレまたは特定の指標により、賃金は多くの場合において上昇している。質的指標も超インフレ経済の特徴を示している。

影響を受ける企業は?

ベネズエラ・ボリバルを機能通貨とする企業 - 修正再表示が必要

IAS第29号4項およびIFRIC第7号3項は、企業が超インフレ経済の存在を認識した報告期間において、財務諸表を修正再表示することを求めています。IAS第29号は、当該経済が常に超インフレであったかのように適用する必要があります。2009年の取引および年度末における非貨幣性項目の残高は、財政状態計算書末日現在の物価指数傾向を反映して修正再表示しなければなりません。比較情報および、開示されている最も早い会計期間の財政状態計算書の期首残高も、財政状態計算書末日現在の物価指数傾向を反映して修正再表示を行わなければなりません。
IAS第29号による会計処理および修正再表示プロセスに関する要約は、PwCinform (登録必要)にて入手可能です。修正再表示の手続きに関する詳細説明および事例は下記をご参照ください。

ベネズエラ経済は米国会計基準においても超インフレ経済となります。米国会計基準の会計モデルはIFRSのものと異なり、企業は、2010年度に超インフレ会計に移行し米国会計基準で求められる指針を適用することになります。


ベネズエラ・ボリバルを機能通貨とする子会社を有する企業

連結財務諸表-超インフレ

連結財務諸表を非インフレ経済の通貨(以後、安定した通貨とする)で報告する企業は、IAS第29号に準拠し、機能通貨をベネズエラ・ボリバルとする子会社の財務諸表を親会社の連結財務諸表に含める前に修正再表示しなければなりません。その後、今期の全て金額を、連結に含めるために、安定した通貨の決算日レートに換算する必要があります。前年度の財務諸表にて今期の金額を安定した通貨で表示した比較情報は、IAS第21号43項およびIAS第21号42項 (b)に基づき修正再表示する必要はありません(つまり、価格水準の事後の変化もしくは為替レートの事後の変化に対する調整は行われていません)。
これにより生じた差異は、関連する資本項目の変動として認識されます。


連結財務諸表-外貨換算

純投資の換算に使用されるレートは大抵、配当金の送金レートですが、当該受取金が実務上別の方法で送金される場合には、別のレートを使用する方がより適切な場合もあります。複数の為替レートのある国では、どの為替レートがIAS第21号に基づく換算に使用する直物相場としての要件を満たすのかについての判断が必要となります。企業は、為替が公定為替レートで取得可能であるか、また、当該公定為替レートが即時送金可能であるか、つまり、直物相場であるかについて検討しなければなりません。資金調達における通常の業務上の遅延は、それにより為替レートが直物相場でないということにはなりません。
経営者はベネズエラにおける公定為替市場へのアクセスのレベルについて、および、公定為替レートが直物相場であるかについて検討する必要があります。企業が適時に公定為替市場の資金にアクセスすることが不可能な場合は、並行為替レートを使用して、ベネズエラ・ボリバルを機能通貨とする海外事業拠点における経営成績や財政状態報告書を換算することが適切な場合もあります。


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