IASBがIAS第19号(従業員給付)における優良社債の活発な市場がない通貨の割引率を改訂する公開草案を公表

2009年08月21日

何が問題となっているか?

国債利回りと優良社債利回りの乖離が、過去12カ月から18カ月の間で大幅に拡大しています。一部の地域では、社債利回りが上昇する一方、国債利回りが下落しています。現行のIAS第19号「従業員給付」では、優良社債の活発な市場がある地域では、優良社債利回りにもとづく利率を用いて従業員給付債務の割引を行うことを求めており、活発な市場がない地域では国債利回りを使用するとしています。

今回IASBは、優良社債の活発な市場があるかどうかの区分が、市場間の歪みを生じさせていると結論づけました。例えば、ヨーロッパではポンドとユーロ通貨においてのみ優良社債の活発な市場が存在しており、英国およびユーロ通貨圏以外のEU諸国に所在する企業は現在、英国およびユーロ通貨圏に所在する企業が使用する割引率よりも大幅に低い利率を適用することが求められています。

IASBはこのような区分を削除し、代わりに優良社債の利率が観察不能で見積りが必要とされる場合であっても、優良社債の利率の使用を求めるという改訂を早期に行うことを決定しました。割引率の見積りには金融商品の公正価値の測定時に用いる観測可能なインプットを使用することになります。

今回提案された改訂は2009年12月31日以前に施行され、本年度の適用は任意となる予定です。当該草案の経過措置については明らかにされていませんが、適用事業年度の開始より将来に向けて適用し、給付建債務の割引率の変更を調整する際に、利益剰余金と財務状態計算書の調整を行うことを目的としているようです。

どのような影響があるか?

当該変更により、スウェーデン、ノルウェー、オーストラリア、南アフリカ、香港など優良社債の活発な市場がない地域にてIAS第19号を適用する企業に影響が生じます。また当該改訂を適用した場合、これら地域における退職後給付債務は減少するため、早期適用を検討する企業も出てくると思われます。

何をすべきか?

当該草案のコメント期限は9月30日であり、コメント期間はほとんどありません。特に、当該改訂の早期適用を検討している企業は、草案内容を熟考し、提案へのコメントや改訂適用時に行う保険数理計算の作業計画に時間を費やす必要があります。