エネルギー業界における急激な変化となるか?

2009年08月10日

何が問題となっているか?

現行のIFRSでは、鉱物および石油・ガスの探査、開発、生産の会計処理についてほとんどガイダンスがありません。採取活動(Extractive activities)のディスカッション・ペーパー(DP)の草案が2009年8月10日に公表され、当該活動に関するIFRSに向けての第一歩となります。

DP案は採取活動の財務報告上の課題を検討し、以下についての見解を提示しています。

  • 財務報告目的における埋蔵量および資源の定義
  • 鉱物および石油・ガス資源の認識基準
  • 鉱物および石油・ガス資源の当初測定および事後測定
  • 開示

最終DPはIASBより2010年第1四半期に正式に公表され、コメントを募集する予定です。DPを草案の段階で公表することは稀であり、IASBはまだレビューを行っていないため、当該草案が正式な公表前に変更されるか、またどの程度変更されるかについては明確ではありません。

DP案の主な内容は以下のとおりです。

(1) 鉱物および石油・ガスの採取活動を単一の財務報告アプローチで提示すること。主な事業活動(すなわち、探査、評価、開発、生産など)、リスクおよび不確実性は両産業において極めて類似する。

(2) 財務報告上の埋蔵量および資源の定義は、鉱物埋蔵量国際報告基準審議会(the Committee for Mineral Reserves International Reporting Standards)およびそれと同等の石油技術者協会(the Society of Petroleum Engineers)の定義を用いるべきである。

(3) 鉱物および石油・ガス資源は探査の法的権利を取得したときに認識される。探査、評価および開発活動から得た情報は探査、埋蔵量および資源資産の増大を表す。

3-1. 資産の認識および開示の際の詳細・集約単位(会計単位)は、当初は探査権の地理的領域である。探査および開発計画が進むにつれて範囲は狭まり、最終的には通常は単一の鉱山もしくは野原が、一つもしくはそれ以上の会計単位となる。
3-2. 有形固定資産に使用される構成要素アプローチは、鉱物および石油・ガス資源の構成要素に適用される。

(4) 鉱物および石油・ガス資源は取得原価で測定され、埋蔵物の量およびその現在価値は開示で補足される。取得原価の提案は下記により推奨されている。

4-1. アナリストの見解から、財務諸表に計上される現在価値は、主としてアナリスト自身の現在価値算定における比較に用いるようになると推奨している。
4-2. 公正価値は財務諸表の利用者に十分な便益をもたらすものではないとする、財務諸表作成者の費用対効果への懸念がある。現在価値を決定する際に公正価値以外の標準化された測定値を用いることは、この懸念に対処しているが、企業の将来ネット・キャッシュ・インフローに関する利用者の理解には関係がない。

(5) 財務諸表における詳細な開示は以下のとおり。


5-1. 商品別、国別もしくはプロジェクト(資源)別の埋蔵量には以下を含む
  • 確認された埋蔵量、確認および推定された埋蔵量
  • 見積方法および仮定
  • 主要な経済状況の仮定(価格および為替レートに関する仮定など)に関する感応度分析
  • 埋蔵量の変動調整表
5-2. 主要な地理的領域ごとの、確認および推定埋蔵量の現在価値もしくは公正価値の測定
  • 標準化された測定値もしくは公正価値による見積り
  • 算定基準および仮定
  • 感応度分析
  • 埋蔵価値の変動調整表
5-3. 商品別の生産収益
5-4. 埋蔵量と同様に分解された5年分の費用内訳
  • 探査費用
  • 開発費用
  • 生産費用

(6) 収益認識、棚卸資産の評価、資産除去債務、共同支配契約など、他の産業においても一般的な課題は当該DPの範囲外となる。


当該DPはthe Publish What You Pay (PWYP)による提案についても検討しています。PWYPはグローバルな社会的市民団体で、鉱物および石油・ガスに関する企業の支払いや政府の歳入を強制的に開示するよう運動しています。PWYPの提案は前述のDP案と類似しますが一般により詳細で、政府への全ての支払い(たとえば、所得税、ロイヤリティなど)について国別の開示を求めています。それに対してIASBにおける本件のプロジェクト・チームは開示範囲を決定する際に重要性を用いることを提案しています。ただし、当該プロジェクト・チームはPWYPの提案する追加開示のいくつかは、投資や決断を行う上で重要であると考え、この追加開示、特に政府への支払いに関する国別開示が費用対効果テストを満たすかどうかを判断するために更なる調査を提案しています。

どのような影響があるか?

当該プロジェクトチームの勧告案がIFRSとして制定されるとその影響は広範囲に及びます。探査コストの資産化に始まり、確認および推定埋蔵物の量および金額の明細の開示に至るまで、鉱物および石油・ガスの探査における全ての段階で影響があると思われます。

何をすべきか?

DP案は現在公表されています。正式な公表は2010年第1四半期に行われ、コメント募集は6ヶ月間になると思われます。したがって、当該提案を分析、熟考した上で、実務的結果を査定し、IASBへ回答するには12ヶ月しかありません。今から貴国におけるプライスウォーターハウスクーパースの採取産業の専門家と共に、貴社のビジネスにおける影響を調査することをお勧めします。