棚卸資産を取り扱う国際財務報告基準には、IAS第2号「棚卸資産」があります。日本においては、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(以下、「棚卸資産基準」)において、評価基準、評価方法および開示が定められています。
この棚卸資産基準はIAS第2号と類似した基準となっています。そこで、ここでは、IAS第2号と棚卸資産基準を比較しながら、その特徴を説明していきます。
IAS第2号と棚卸資産基準では、それぞれ、棚卸資産を以下のように定義していますが、これらはほぼ同一と考えられます。ただし、棚卸資産基準の最後にある「販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等」に関しては、IAS第2号では棚卸資産に含まれませんので注意が必要です。
(棚卸資産の定義)
| IAS第2号 | 棚卸資産基準 |
|---|---|
| (1) 通常の事業の過程において販売を目的として保有されているもの (2) その販売を目的とする生産の過程にあるもの (3) 生産過程もしくは役務の提供に当たって消費される原材料又は貯蔵品 |
棚卸資産は、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産であり企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産のほか、売却を予定しない資産であっても、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等も含まれる。 |
IAS第2号では、棚卸資産は、原価または正味実現可能価額(注)のいずれか低い方で計上することとされています。一方、棚卸資産基準では、取得原価をもって貸借対照表価額とし、正味売却価額(注)が取得原価よりも下落しているときには、正味売却価額をもって貸借対照表価額とするとされていますが、基本的にはIAS第2号と同じであると考えられます。
IAS第2号では、原材料の価格の下落により、当該原材料が組み込まれる製品の正味実現可能価額が原価より低下している場合には、その原材料は正味実現可能価額まで評価減されることになりますが、そのような場合、原材料について再調達原価を使うことも認められています。また、これについて、棚卸資産基準においては、製造業における原材料等のように再調達原価の方が把握しやすく、正味売却価額が再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合には、継続して適用することを条件として、再調達原価によることができるとされています。
(注)正味実現可能価額と正味売却価額
IAS第2号では正味実現可能価額について、「通常の事業の過程における予想売価から、完成までに要する見積原価および販売に要する見積費用を控除した額」と定義しています。
一方で、棚卸資産基準における正味売却価額は、「売価(購買市場と売却市場とが区別される場合における売却市場の時価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したもの」とされていますので、実質的にはIAS第2号の正味実現可能価額と大きな意味の相違はないと考えられます。
IAS第2号における評価減後の取り扱いは、洗替え法が採用されるため、評価減を行った後の価値の変動について検討し、必要に応じて評価損の戻入れを行うことになります。
これに対し、棚卸資産基準では、切放し法と、IAS第2号と同様の洗替え法の選択適用が認められています。
IAS第2号では、棚卸資産の評価は、通常は個々の棚卸資産項目毎に行われますが、同種または関連品目に属するものについては、グルーピングをしたうえで評価することも可能です。たとえば、同一地域で生産および販売が行われ、かつ、実務上同一生産ラインの他の品目と区別して評価することができないような棚卸資産がこの状況に該当するとしています。
また、これについては、棚卸資産基準でも、棚卸資産の評価は個別品目単位で行うことを原則としながらも、一定の状況の下では継続適用を前提に、IAS第2号と同様、グルーピングによる方法を認めています。
棚卸資産の原価配分方法については、IAS第2号では、互換性のない棚卸資産には個別法、それ以外には加重平均法と先入先出法が認められています。売価還元法や標準原価法についてもIAS第2号ではその適用結果が原価と近似する場合にのみ、使用が認められています。日本の評価方法としては、IAS第2号と同様、個別法、先入先出法、平均法、売価還元法が認められています。
IAS第2号においては、コモディティ・ブローカー/トレーダーが保有する棚卸資産が、販売費用控除後の公正価値により測定される場合は、販売費用控除後の公正価値の変動は当該変動が発生した期の損益として認識されるものとしています。
棚卸資産基準においても、トレーディング目的で保有する棚卸資産については、市場価格に基づく価額をもって貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額(評価差額)は、当期の損益として処理するとしていることから、基本的にはIAS第2号と同じと考えらます。
*このQ&Aは、『週刊 経営財務』 2857号(2008年02月18日)にあらた監査法人 企業会計研究会として掲載した内容に一部加筆・修正を行ったものです(2011年3月末時点の最新情報)。発行所である税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。