KeyWord5 のれんの会計処理

質問無形資産、特にのれんの会計処理には何か日本の基準と違うところがありますか。

答

国際財務報告基準(IFRS)では、IAS第38号「無形資産」において無形資産に関する包括的な基準が規定されているほか、IFRS第3号「企業結合」において企業結合時に発生するのれんおよびその他の無形資産について規定されています。他方、日本基準においては、「研究開発費等に係る会計基準」等の基準や実務指針にソフトウェアについての規定があるものの、現在のところ、無形資産について包括的な基準はありません。ただし、企業結合時に発生するのれんおよびその他の無形資産については「企業結合に係る会計基準」等において規定されています。

ここでは、企業結合時ののれんの会計処理のうち、企業結合時ののれんの測定方法、企業結合後ののれんの会計処理について、説明をしていきたいと思います。

なお、現在、日本基準における無形資産およびのれんの取り扱いについては、国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点から、企業会計基準委員会において検討中であり、具体的には、のれんの償却については、2009年7月に「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」、無形資産の包括的基準については、2009年12月に「無形資産に関する論点の整理」がそれぞれ公表されました。今後の議論によっては、現行の取り扱いが変更される可能性があります。

1.企業結合時ののれんの測定方法

日本基準において、のれんは「取得原価としての支払対価総額と、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額との間」に生じる差額をいい(企業結合に関する会計基準)、のれんは差額としての概念であり、個別に識別して測定されません。

一方、IFRSにおいては、のれんを「企業結合で取得した、個別に認識されず独立して認識されない他の資産から生じる将来の経済的便益を表す資産」と定義した上で、移転した対価と取得した識別可能資産・負債および偶発負債の公正価値に対する取得企業の持分との差額として算定する日本基準と同じ購入のれんアプローチの他に、100%取得ではない企業結合において非支配持分(日本基準の少数株主持分に相当します)全体を公正価値で測定する全部のれんアプローチも認められています。このアプローチによれば、株式を取得した結果、子会社となるようなケースでは、図表1で示したように、親会社の持分部分に対応するのれんだけではなく、非支配持分に係るのれんも計上されることになります。

【図表1】 企業結合時の購入のれんと全部のれんの算定

2.企業結合後ののれんの会計処理

日本基準において行われる正ののれんを償却する取り扱いは、企業結合の成果たる収益と、その対価の一部を構成する投資消去差額の償却という費用の対応が可能になり、またのれんは投資原価の一部であることから、のれんを規則的に償却する方法は、投資原価を超えて回収された超過額を企業にとっての利益とみる考え方とも首尾一貫していると考えられています。したがって、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却されることとされており、加えて減損の兆候がある場合には、減損損失の認識の検討を行うことが要求されています。

これに対しIFRSでは、正ののれんは償却せず、減損の兆候があるなしにかかわらず少なくとも年に一度は減損の検討を行うことが要求されています。

なお、被取得企業の取得原価が取得した資産および引き受けた負債に配分された純額に満たない場合に貸方に発生する負ののれんについては、IFRSおよび日本基準のいずれにおいても、発生時に利益として即時認識することになります。

【図表2】のれんの会計処理についての相違
  日本基準 IFRS
のれんの測定 購入のれん方式 購入のれん方式/全部のれん方式
正ののれんの会計処理 定額法その他の合理的な方法により規則的に償却 償却せず減損処理を適用

3.日本基準との差異についての検討

日本では2009年7月に「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」が公表され、のれんの償却に関して、日本基準上の取り扱いに関し、IFRSの取り扱いと整合させるかについて引き続き検討が行われています。

*このQ&Aは、『週刊 経営財務』 2361号(2008年03月17日)にあらた監査法人 企業会計研究会として掲載した内容に一部加筆・修正を行ったものです(2011年3月末時点の最新情報)。発行所である税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。