KeyWord20 IFRSの財務諸表

質問IFRSにおける財務諸表はどのように作成されますか。

答

1.IFRSにおける財務諸表の体系

国際会計基準審議会(IASB)は2007年9月、米国財務会計基準審議会(FASB)との共同プロジェクトの一環として、IAS第1号「財務諸表の表示」を改訂しました。当該改訂基準は2009年01月01日以降開始する事業年度から適用されています。

IFRSにおける財務諸表は、以下の計算書から構成されます。

  • 財政状態計算書
  • 包括利益計算書(*)
  • 持分変動計算書
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 重要な会計方針の要約及びその他の説明的情報で構成される注記
  • (会計方針の遡及適用、財務諸表項目の遡及的修正再表示、又は財務諸表項目の組み替えを行った場合) 比較対象期間のうち最も早い年度の期首時点の財政状態計算書

(*) ただし、2計算書方式(包括利益計算書を当期純損益とその他の包括利益に分割し、当期純損益を表示する損益計算書と、当期純損益から始まってその他の包括利益を表示する包括利益計算書の2つを作成する方式)も認められる。

2.財務諸表の作成要件

(1)IFRSへの準拠性

IFRSにおける財務諸表の適正な表示は、IFRSに準拠し、また必要な場合には追加的な開示を行うことによって作成されると考えられています。そのため、IFRSのフレームワークの資産、負債、収益、費用の定義や認識要件に従った会計処理が求められています。

また、この他、財務諸表の適正な表示のために以下の事項も必要であるとされています。

1) IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従った会計方針の選択と適用
2) 会計方針を含む情報の表示方法における「目的適合性」、「信頼性」、「比較可能性」、「理解可能性」についての検討 3) IFRSの規定に準拠するだけでは不十分な場合の追加的開示

(2)継続企業の前提

財務諸表を作成する場合、経営者は継続企業として存続する能力を評価し、特別な場合を除き、継続企業の前提で作成しなければなりません。

仮に、経営者が企業の継続企業としての存続能力に重大な疑義を生じさせるような事象又は状況に関する重要な不確定事項を発見した場合には、その事項を開示する必要があります。

(3)発生主義会計の適用

企業はキャッシュ・フロー情報を除き、発生主義会計により財務諸表を作成しなければなりません。これにより、財務諸表ではフレームワークの定義及び認識要件を満たした場合、資産、負債、資本、収益及び費用が認識されることになります。

(4)表示の継続性

財務諸表上の項目の表示及び分類については、以下の場合を除いて継続して適用しなければなりません。

  • 企業の事業内容に重大な変化があった場合又は財務諸表の表示や分類を再検討したことにより、IAS第8号の会計方針の選択と適用の要件について別の表示や分類がより適切であることが明らかな場合
  • IFRSが表示の変更を求めている場合

(5)重要性と合算

類似項目の分類に、重要性がある場合には、財務諸表上で区別して表示しなければなりません。また、類似性がない項目については、重要性がない場合を除いて区別して表示しなければなりません。

(6)相殺の禁止

資産と負債、収益と費用はIFRSによって要求もしくは許容されていない限り、相殺してはなりません。

(7)比較情報

当期の財務諸表において報告される金額的情報については、特別な場合を除き、比較情報として前期情報を開示しなければなりません。また、当期の財務諸表の理解に役立つ場合には、説明的・記述的な情報に関する比較情報も含めなければなりません。

(8)財務諸表外の情報

IFRSが適用される財務諸表は、同じ公表書類中のIFRSが適用されない他の情報と明確に区別しなければなりません。

(9)報告の頻度

企業は完全な一組の財務諸表(比較情報を含む)を少なくとも年に1回は報告しなければなりません。期末日が変更される場合には、以下の事項を開示しなければなりません。

  • 1年よりも長い期間又は短い期間が使用されている理由
  • 財務諸表の比較数値が完全に比較可能とはならない旨

3.最近の改訂の動向

IASBは2010年5月に、IAS第1号を修正する公開草案「その他の包括利益の項目の表示」を公表し、「包括利益計算書」の名称を「純損益及びその他包括利益計算書」に変更すること、現在の1計算書方式と2計算書方式の選択適用から1計算書方式のみとすること、また、その他の包括利益の項目をリサイクリング(組替調整)がされるものとされないものを区別して表示することが提案されました。その後のコメント期間を経て、2011年06月16日に最終基準が公表されましたが、公開草案の提案のうち1計算書方式への統一は取り下げられ、1計算書方式と2計算書方式の選択が引き続き認められることになりました。この改訂は、2012年07月01日以降開始事業年度から適用されます(早期適用可)。

上記とは別に、IASB及びFASBは2008年10月にディスカッション・ペーパー「財務諸表の表示についての予備的見解」を公表し、各計算書において「事業活動」と「財務活動」を区別して表示するなどのモデルが提案されました(フェーズB)。また、キャッシュ・フロー計算書に関しては直接法のみを認める提案も含まれていました。その後2010年7月にIASB及びFASBよりそれぞれ公表されたスタッフ・ドラフトでは、間接的直接法(indirect-direct method)が認められることが示されています。今後、スタッフ・ドラフトに対するアウトリーチ活動等で得られたコメント等を考慮した公開草案が公表される予定ですが、その公表時期については未定です。

*このQ&Aは、『週刊 経営財務』 2853号(2008年01月21日)にあらた監査法人 企業会計研究会として掲載した内容に一部加筆・修正を行ったものです(2011年06月30日時点の最新情報)。発行所である税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。