連結財務諸表の作成に関する事項については、国際財務報告基準(IFRS)では国際会計基準第27号(IAS第27号)「連結及び個別財務諸表」に定めています。また、一時支配の子会社の連結については、IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」、リースや金融資産の証券化等を目的として創設される特別目的事業体の連結については、解釈指針第12号(SIC第12号)「連結-特別目的事業体」が適用されます。
IFRSでは自社が「支配している事業体」をすべて連結することになります。ここにいう「支配」とは「企業活動からの便益を得るために、企業の財務及び経営方針を左右する力」と定義した上で、こうした支配を決定するための具体的な指針として、企業の議決権の過半数をあげ、議決権の過半数を直接・間接に保有している場合には支配が存在しているものとの強い推定が働くとしています。また、議決権が過半数に満たない場合でも、図表1のような状況では支配が存在するものとしています。
| (a) | 他の投資家との合意によって議決権の過半数を有している場合 |
|---|---|
| (b) | 法律又は契約によって財務方針及び経営方針を左右する力を有している場合 |
| (c) | 取締役会等企業を統治している経営機関の構成員の過半数を選解任する力を有している場合 |
| (d) | 取締役会等企業を統治している経営機関における投票権の過半数を有している場合 |
また、支配しているかどうかを決定する際には潜在的議決権を考慮することが求められています。たとえば、新株予約権や株式コール・オプション、普通株式への転換が可能な各種証券等、行使されたり転換された場合に保有者の議決権比率を増加させることになる(したがって他の株主の議決権比率を減少させることになる)効果、すなわち潜在的な議決権を与える金融商品を企業が保有することがあります。IFRSにおける支配の有無の判定にあたっては、こうした潜在的議決権のうち、現在行使(転換)可能なものの存在が有する影響を考慮することが求められます。潜在的議決権の有する影響の評価にあたっては、単にオプションや転換権の行使を仮定した場合の議決権の数値のみで判断するのではなく、オプションの行使条件やその他の契約条件等、関連するすべての事実および状況を総合的に勘案して判断することになります。
日本基準においても、「連結財務諸表原則」の第三において自社が意思決定機関を支配している他の会社(子会社)をすべて連結の範囲に含めなければならない旨が定められており、支配力基準が適用されている点ではほぼ同様と考えることができます。なお、日本においては、「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取り扱い」(企業会計審議会)、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準委員会)等が公表されており、IAS第27号より詳細な指針や例示が示されています。また、潜在的議決権の取り扱いについては日本基準において明確な定めは存在しておらず、IAS第27号の実務適用にあたっては検討が必要な項目の1つです。
なお、上記の「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」ではベンチャー・キャピタルである投資企業が他の会社を有している場合に、一定の条件を満たせば当該会社を連結から除外することが認められていますが、IAS第27号は投資企業がベンチャー・キャピタルであることをもって、子会社が連結除外されないと明記されていますので留意が必要です。
IFRS第5号では、一時支配で保有している子会社について、売却目的保有分類の要件を満たす場合、その子会社のすべての資産及び負債を売却目的保有に分類しなければなりません。その場合、当該子会社を連結した上で、資産及び負債は売却目的保有として分類されないとした場合の帳簿価額と、売却費用控除後の公正価値のいずれか低い金額で評価されます。
包括利益計算書上は非継続事業として、(a)非継続事業の税引後損益 および (b)売却費用控除後の公正価値で測定した税引後損益、または非継続事業を構成する資産又は処分グループを処分したことにより認識した税引後損益を、それぞれ総額からなる単一の金額で表示します。また、財政状態計算書では、売却目的保有に分類された非流動資産または、処分グループとして他の資産と区分して表示されます。同様に、売却目的保有に分類された処分グループに含まれる負債も、他の負債と区分して表示されます。なお、これらの資産、負債は相殺せず、それぞれ単一の金額として表示されます。
一方、わが国会計基準では、「連結財務諸表原則」の第三において、支配が一時的であると認められる子会社については、連結の範囲に含めないものとするとしており、一時支配の規定が残されています。このため、IFRSの適用にあたっては、連結を行ってIFRS第5号を適用する必要がある点については留意が必要です。
限定的かつ明確な目的を達成するために創設された事業体である特別目的事業体(SPE)について、SIC第12号は上記に示した一般的な支配の考え方に加え、 図表2 のような状況がある場合については、SPEを支配しており、連結範囲に含められることがあることを規定しています。
| (a)事業活動 | 実質的に、SPEの事業活動が企業の特定の事業上の必要に従ってその企業のために行われ、それにより企業はSPEの事業運営から便益を得ている。 |
|---|---|
| (b)意思決定 | 実質的に、企業はSPEの事業活動の便益の大半を獲得するための意思決定の権限を保有し、又は「自動操縦」の仕組みを設定することによって企業はこの意思決定の権限を委託している。 |
| (c)便益とリスク | 実質的に、企業はSPEの便益の大半を獲得する権利をもつゆえにSPEの事業活動に伴うリスクに晒されている。 |
| (d)残余価値 又は 所有者リスク | 実質的に、その企業は、SPEの事業活動からの便益を得るために、SPE又はその資産に関連した残余価額又は所有者リスクの大半を負っている。 |
このように、現行のIFRSではSPEについて、誰が便益を受けているか、誰がリスクを負担しているのかという分析を行い、それに該当する者が支配をしていると推定されることになっています。しかし、詳細な指針がないため、非常に判断を要する分野とも考えられます。
日本では、「財務諸表等規則」第8条第7項で、特別目的会社については、適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されているときは、当該特別目的会社に対する出資者及び当該特別目的会社に資産を譲渡した会社等から独立しているものと認め、出資者等の子会社に該当しないものと推定するとしています。したがって、基本的には適正な価額で資産が特別目的会社に譲渡され、また当該特別目的会社が「自動操縦」の仕組みとなっている場合には、出資者等の連結から除外されていますが、IFRSの適用にあたっては、再度、上記の観点から連結の可否についてそれぞれの事案ごとに十分に検討する必要があると考えられます。
なお、2011年3月の「連結財務諸表に関する会計基準」の改訂により、2013年04月01日以後開始する連結会計年度の期首から、上記特別目的会社に対する連結除外の規定の対象から、「出資者」が除かれることになります。
IASBでは、既存のIAS第27号およびSIC第12号の置き換えを目指して連結プロジェクトが進められており、2008年12月に、公開草案第10号「連結財務諸表」が公表されました。当該公開草案は、「報告企業が、自らのためにリターンを生み出すように他の企業の活動を指図するパワーを有している場合、当該報告企業は他の企業を支配している」として、特別目的事業体を含むすべての事業体に適用可能な支配モデルの設定並びに連結及び非連結企業に関する開示について検討しています。このプロジェクトの今後の動向によっては、従来の連結の範囲が影響を受ける可能性があります。
*このQ&Aは、『週刊 経営財務』2886号(2008年09月22日)にあらた監査法人 企業会計研究会として掲載した内容に一部加筆・修正を行ったものです(2011年03月31日時点の最新情報)。発行所である税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。