KeyWord12 企業結合会計

質問企業結合会計について教えてください。また、日本基準とはどのような差異がありますか。

答

国際財務報告基準(IFRS)においては、IFRS第3号「企業結合」およびIAS第27号「連結及び個別財務諸表」で企業結合会計の取り扱いが規定されています。IFRSでは、すべての企業結合に「取得法(Acquisition method)」を適用して会計処理を行うこととされています。したがって、企業結合においては取得企業が必ず識別され、日本基準で規定されている「持分の結合」の概念はありません。なお、企業結合でも、共通支配下の取引や共同支配企業の形成についてはIFRS第3号が適用されません。

以下では、IFRSにおける取得法による企業結合会計の概要を示し、合わせて日本基準のパーチェス法との比較を行います。

1.取得法による取得日(支配獲得日)の会計処理の概要

IFRSにおける取得法は、取得日(支配獲得日)に、被取得企業の識別可能資産及び負債、取得企業が支払った取得の対価、非支配持分を、基本的に全て取得日における公正価値で認識、測定する方法です。

以下では、取得企業の識別、取得日の決定、取得の対価の測定、識別可能資産及び負債、非支配持分の認識及び測定、のれんの認識及び測定、取得コストの順にしたがって、取得法による企業結合の取得日の会計処理を解説します。

(1)取得企業の識別

取得法はすべての企業結合について、一方が取得企業となり他方が被取得企業となること、すなわち取得企業が識別可能であることを前提としています。取得企業の識別は支配の獲得を基準として行われ、基本的には支配力を有している企業が取得企業に該当します。IFRSでは、取得企業の識別についての指針が規定されており、現金等の譲渡、債務の引受で実施された企業結合においては、これを行った企業が取得企業となります。また、株式交換等で行われた企業結合においては、結合当事企業の所有者(株主)の、結合後企業における議決権の保有比率、結合後企業における統治機関構成員の過半数や上級経営陣を選出する能力、企業結合の対価として交付される株式についての公正価値以上のプレミアム支払などを基礎に、取得企業が識別されます。

(2)取得日の決定

取得日は支配を獲得した日であり、通常は取得の対価を支払い、被取得企業の識別可能資産及び負債を獲得した日となります。

(3)取得の対価の測定

(1)取得日の公正価値による測定
IFRSでは、取得企業が取得に際して支払った対価は、取得日における公正価値により測定されます。この場合の対価の種類としては、現金や取得企業の株式などが代表的ですが、その他の資産の提供や、被取得企業の負債の引き受けといった形で行われる場合もあります。なお、取得の対価が株式の場合も、原則どおり取得日における公正価値により測定が行われます。

日本基準では、原則として企業結合日における株価を基礎にして算定するとしており、IFRSと同様の取り扱いとなっています。

(2)段階的取得の場合の既存持分の再測定
上記(1)のとおり、IFRSでは、取得企業が取得に際して支払った対価は、取得日における公正価値により測定されます。これと整合する形で、段階取得の場合は、既存の投資による持分についても取得日時点の公正価値による再測定が求められています。結果として損益が生じる場合には、支配獲得が生じた会計期間において損益として認識されます。たとえば、ある会社に対し当初40%の投資を行い、その後追加で20%を投資し支配を獲得した場合、20%の取得日に当初持分と追加投資分を合わせた60%部分が公正価値で測定されることになります。

これについても日本基準では、IFRSと同様の取り扱いとなっています。

(4)識別可能資産及び負債、非支配持分の認識及び測定

IFRSでは、被取得企業の識別可能資産及び負債は、基本的に、取得日における公正価値により認識、測定されます。

また、非支配持分について、以下のいずれかの方法による測定を行うことが求められています。

(1)非支配持分の公正価値
(2)被取得企業の識別可能資産及び負債の公正価値に対する非支配持分比率

(1)は非支配持分そのものについて公正価値の測定を行う方法であり、この場合、非支配持分についてものれんが発生し、いわゆる全部のれんが計上されます。(2)は識別可能資産及び負債の公正価値に非支配持分の割合を乗じる方法です。

日本基準では、非支配持分(少数株主持分)の評価について、(1)の全部のれんを認識する方法は認められていません。また、(2)は日本基準で規定されている全面時価評価法に相当します。

(5)のれんの認識及び測定

IFRSでは、公正価値により認識、測定された取得の対価及び非支配持分が、公正価値により認識、測定された識別可能資産及び負債の純額を上回る場合、その差額はのれんとして認識されます。

上記の(3)~(5)に示した会計処理は、 図表1 のように示すことができます。なお、非支配持分の評価は上記の(4)(1)の処理によっています。

図表1 企業結合時の認識される貸借対照表項目の関係
被取得企業の貸借対照表

(6)取得コスト

IFRSでは、取得に関連する費用、たとえば企業結合に関連して投資銀行や弁護士等へ支払ったアドバイザリー手数料は、発生した期間に費用として認識します。

これに対し日本基準は、企業結合に直接要した支出は、取得原価に含まれるものとされていますので、支配獲得時に計上されるのれんの額に影響を与えることとなります。

2.取得日以後の会計処理の概要

取得日以後の会計処理は多岐にわたりますが、ここでは、とりわけ重要なのれん及び負ののれんの会計処理、支配喪失時の会計処理及び支配を保有した状況での持分の変動について解説します。

(1)のれん及び負ののれんの会計処理

(1)のれん
IFRSでは、企業結合で認識されたのれんについて、規則的な償却を行わず、少なくとも年に一度減損のテストを実施することを求めています。また、必要に応じて適時に減損処理を行うことが必要とされています。

これに対し日本基準では、企業結合で認識されたのれんについて20年以内に定額法その他の合理的な方法により規則的に償却を行い、減損の兆候がある場合には、必要に応じて減損が認識されます。

(2)負ののれん
IFRSでは、負ののれんが発生する場合には一時に償却を行い、利益として認識することが必要とされています。

日本基準でも、IFRSと同様に直ちに利益として認識されます。

(2)支配喪失時の会計処理

IFRSでは、持分の売却等により子会社に対する支配を喪失した場合、親会社であった会社は、子会社に関するすべての資産及び負債、非支配持分について、連結財務諸表上の帳簿価額により認識を中止します。また、子会社であった会社に対する残余持分については、支配を喪失した日における公正価値で認識、測定します。

したがって、支配の喪失時には、持分の売却による損益と残余持分の再測定による損益から構成される、支配の喪失による損益が認識されます。

日本基準では、支配を喪失し関連会社となる場合には、持分法を適用した評価額により評価します。また、関連会社にも該当しなくなった場合には、個別貸借対照表上の帳簿価額をもって評価します。したがって、支配喪失時に子会社であった会社に対する残余持分についての再測定は行われません。

(3)支配を保有した状況での持分の変動

IFRSでは、支配を保有した状況で持分の変動があった場合は資本取引として取り扱われ、連結財務諸表上持分の帳簿価額と対価の公正価値との差額は資本の部において認識されます。

日本基準では、子会社株式の追加取得に関しては、追加取得部分と追加投資額との差額はのれん(又は負ののれん)として会計処理され、子会社株式の一部売却においては、売却による親会社持分の減少と投資の減少の差額は、取引の発生した会計期間に損益として計上されます。

以上に示したIFRSと日本基準の取得法(パーチェス法)についての差異の概略は 図表2 のとおりです。

図表2
1.取得日(支配獲得日)の会計処理
  IFRS(取得法) 日本基準(パーチェス法)
企業結合の対価に株式が用いられた場合の取得の対価の測定 取得日 企業結合日
段階的取得の場合の既存持分の再測定 取得日に既存持分を公正価値で再測定し、差額は損益として処理 IFRSと類似
非支配持分(少数株主持分)の評価 次のいずれかによる
  • 非支配持分の公正価値
  • 識別可能資産及び負債の公正価値に対する非支配持分比率
  • 少数株主持分の公正価値評価は認められていない。
  • 全面時価評価法
取得コスト 費用として処理 取得原価に含める
2.取得日以後の会計処理
  IFRS(取得法) 日本基準(パーチェス法)
のれんの処理 毎期減損のテスト(償却なし) 20年以内で定額法等により規則的に償却
負ののれんの処理 発生時に一時に償却を行い利益として認識 IFRSと類似
支配の喪失時の処理
  • 資産及び負債、非支配持分については、連結財務諸表上の帳簿価額により認識を中止
  • 残余持分については、支配を喪失した日における公正価値で認識、測定
  • 関連会社となる場合には持分法を適用した評価額により評価
  • 関連会社にも該当しなくなった場合には、個別貸借対照表上の帳簿価額をもって評価
  • 支配喪失時に子会社であった会社に対する残余持分についての再測定は行わない。
支配を保有した状況での持分の変動 持分の帳簿価額と対価の公正価値との差額は連結会社の資本の部において認識
  • 追加取得に関しては、追加取得部分と追加投資額との差額はのれん(又は負ののれん)として認識
  • 一部売却においては、売却による親会社持分の減少と投資の減少の差額は損益として認識

3.日本基準の公開草案

我が国においては、平成21年7月にIFRSとのコンバージェンスの一環として「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」が公表され、既存の差異として残っているのれんの償却等について議論が行われており、今後の動向が注目されます。

このQ&Aは、『週刊 経営財務』2881号(2008年08月18日)にあらた監査法人 企業会計研究会として掲載した内容に一部加筆・修正を行ったものです(2011年03月31日時点の最新情報)。発行所である税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。