連載 「戦略人材マネジメント基礎講座」
第11回 雇用ミックスと人材マネジメント
'05.10.20
プライスウォーターハウスクーパースHRS株式会社
マネージング ディレクター
山本 紳也
皆さんの会社には何種類の人が存在しているでしょうか?
管理職と組合員、一般職と総合職、専門職と呼ばれる人、契約社員、パート、アルバイトの人、本社からの出向者、最近は、同じ職場でも色々な人が働いているのではないでしょうか。これからは、今まで以上に、色々な人が同じ職場で働くようになってきます。会社での人事制度もひとつではなくなるでしょう。今回は、人材雇用ミックスと人材マネジメントいうことについて考えてみましょう。
| - | さまざまな雇用形態 |
まず、雇用形態の違いで何が異なるのかを整理してみましょう。基本的に雇形態の違いは契約の違いによるわけですが、職種や職責による違い、労働時間の管理方法、成果管理の方法、雇用関係・指揮命令系統の有無、報酬の出所、等々、色々な切り口がありますが、ここでは、以下の2図のように整理してみました。

| - | 雇用形態にはそれぞれの長短がある |
正社員(期限の定めのない雇用契約社員)は、当然、長期的に組織に組み込まれた一員であり、業務の選択(配属)、業務プロセス、労務管理などは、組織の指揮命令下での管理にあり自由度は低いといえます。しかし、雇用が保障されている(労働法では企業の指揮命令権と引き換えに雇用保障を要求する)上に、成果に応じた報酬も期待ができます。ただ、法的に、管理職は成果基準で評価報酬を与えやすいものの、一般従業員は、パートやアルバイトと同様に時間で管理報酬決定をしなければなりません。一般的には組織的に責任の大きな仕事は正社員に担当させることが多いでしょう。
これに対し、パートやアルバイトは、時間管理の下で指揮命令に沿って働くことが求められ、報酬もあくまで時間基準であるものの、業務や成果に対する責任が軽いといえます。また、働く期間や時間を合意の上で決定できることが双方にとっての利点といえるでしょう。さらに、その労務マネジメント業務をアウトソースしたのが派遣社員活用と言えるでしょう。
| - | 雇用形態の多様化は確実に進んでいる |
最近では、特殊技能を持った人や特定プロジェクトの担当、或いはある特定条件での雇用など、色々な期間限定契約社員が増加傾向にあります。一番の特徴は、雇用期間が定められていることにあります。これは、企業が色々な人材を期間限定で求めることが増えているのと同時に、個人でも色々な働き方を求めている人が増えており、この需給がマッチすることにより増加しているといえます。企業からすると、特定期間、特定技能を持った人材を雇用できるメリットがあり、個人には、決まった期間だけ働く、自分の得意な伸ばしたい業務だけを担当してキャリアに結びつける、などの利点があるといえるでしょう。ただ、契約社員と一言でいっても、その種類は多岐にわたります。本当に特殊技能を買われて雇われる「プロ」といえる雇用人材もいれば、決められた作業を一定期間こなす作業者としての契約社員もいます。また、これからは中国ビジネス立上のプロと立上時期だけ契約するような雇用も増えてくるでしょう。
もうひとつ、企業から見ると正しくは雇用ではないのですが、委託契約(請負契約)というのがあります。これは、個人事業主と業務委託を行う業務契約です。企業と個人事業主の間に雇用関係はなく、業務プロセスにも指揮指導権は存在しません。あくまで委託業務の内容とアウトプット(成果)での契約関係になります。よく知られるところでは、生命保険会社の外交営業職員などがこれに当ります。また、最近はインディペンデントコントラクターと呼ばれる個人のプロが一定期間、雇用ではなく、業務を請け負う形で委託契約を受ける形態も増えつつあります。これらには、技術的なアドバイザーから、経営コンサルタント、事務業務請負、社外経営企画のような職の人など、多岐にわたる業務が含まれています。
ここまで整理してくると、何となく、新店舗開発の時に、店舗開発の担当、店長、店の従業員は、それぞれ、雇用形態自体が異なっていても何らおかしくない。或は異なるべきだとは思えてこないでしょうか。
このように労働市場ニーズ(価値観の多様化)、人件費の変動費化、労働法規の整備、スピードの求められる技術革新、などにより、雇用形態の多様化が急激に起こっています。今後、益々、企業は多種多様な働き方を提供すると共に、多種多様な人材マネジメント方法が求められることになりそうです。
| - | 雇用形態は戦略的に考え、雇用ミックスを考える |
では、これからの、多種多様な人材を生かした戦略的な人材マネジメントとはどうなっていくのでしょうか。今までの雇用ミックス(一般職と総合職、組合員と管理職、正社員と非正社員(アルバイトやパート、派遣)など)は、それぞれが何か組織上の階層のように、水平線で仕切られるようなイメージが強かったのではないでしょうか。これは、組織がミラミッド型のヒエラルキーで成り立ち、それぞれの役割が明確で、縦の指揮命令系統で業務が成立していたためといえます。
しかし、これからは違います。ビジネスの戦略や環境により組織の形態が異なります。長期的に安定的成長と継続が重要な事業では、長期にコミットメントをもって働く正社員が重要です。短期に創造性をもって事業を立ち上げ、短期で投資回収をするようなビジネスでは、短期的な業績に報酬も連動させたような契約で、短期プロジェクト契約社員や委託契約の活用が有効かもしれません。シーズナリティが大きかったり、先が見えにくい事業で、かつ早期習熟可能な単純作業職では、今まで以上に労働法の改正を活用しアルバイトはパート、派遣社員を活用しない手はないでしょう。
これからの時代は、使用者である企業は生産性を考え、使用人である個人はどのような雇用関係を結ぶのが自分のキャリアや生活にとってよいのかを考え、そのマッチングを図っていくことになるでしょう。
(TPIS 2004年11月号掲載)