「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第35号)の公表(ASBJ)

View this page in: English

2017年5月12日 第328号

  • 2017年5月2日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」)は、実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」(以下、「本実務対応報告」)を公表しました。
  • 本実務対応報告は、公共施設等運営事業において、運営権者が公共施設等運営権を取得する取引および運営権者が更新投資を実施する取引に関する会計処理等について、実務上の取扱いを明らかにすることを目的として公表されたものです。
  • 本実務対応報告は、2017年5月31日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することとされています。

経緯

(1)検討の背景

2011年に民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)(以下、「民間資金法」)が改正され、公共施設等運営権を民間事業者に設定する制度(公共施設等運営権制度)が新たに導入されました。その後、2014年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』 改訂2014」において、当該制度を活用する環境整備のために会計上の処理方法の整理を行うこととされたため、2015年7月に開催された第24回基準諮問会議において、内閣府より会計上の取扱いについての検討を行う事が提案されました。

これを受けて、ASBJにおいては2015年12月より、公共施設等運営事業における運営権者の会計処理および開示に関する検討を行うこととなり、2016年12月22日に公開草案が公表され、2017年5月2日に本実務対応報告が公表されています。

(2)公共施設等運営事業の概要

公共施設等運営権制度は、民間資金法において次のような制度として規定されています。

  • 民間資金法第2条2項に規定する公共施設等の整備等に関する事業で、管理者等が所有権を有する公共施設等について運営等を行い、利用料金を自らの収入として収受する(民間資金法第2条6項)
  • 当該公共施設等について、その運営事業を実施する権利(公共施設等運営権)を運営権者に設定する
  • 公共施設等運営権は物権とみなされ(民間資金法第24条)、分割や併合は認められず、第三者への移転には管理者等の許可が必要となる(民間資金法第26条)
  • 実施契約上の事項に関して運営権者に重大な違反があった場合等において管理者等による公共施設等運営権の取消しが認められているが(民間資金法第29条第1項)、運営権者による実施契約の解約の可否は民間資金法上規定されていない。

【図表】公共施設等運営権制度のイメージ図

出典:ASBJ作成「実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の公表【参考資料】」

主な内容

(1)範囲

本実務対応報告は、公共施設等運営事業において、運営権者が実施する以下の取引に関する会計処理および開示に適用することとされています(実務対応報告第2項)。

  • 公共施設等運営権(民間資金法第2条7項に規定する公共施設等運営権)を取得する取引
  • 公共施設等に係る更新投資(民間資金法第2条第6項に基づき、運営権者が行う公共施設等の維持管理)を実施する取引

(2)公共施設等運営権に関する会計処理

運営権者は公共施設等の運営権対価(※1)の支払い方法に応じて、当該運営権対価を無形固定資産に計上することとされています

運営権対価の支払い方法

無形固定資産の計上額

減価償却の方法

一括払い

運営権対価について、合理的に見積もられた支出額の総額

(実務対応報告第3項)

運営権設定期間を耐用年数(※2)とする、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法

(実務対応報告第8項)

分割払い

運営権対価の支出額の総額の現在価値(※3)

(実務対応報告第4項)

(※1)管理者等と運営権者との間で締結された実施契約(民間資金法第22条第1項に規定する公共施設等運営権実施契約)において定められた公共施設等運営権の対価
(※2)一定の条件の下で運営権設定期間を延長できる条項(延長オプション)の定めがある場合、当該条項の行使の意思が明らかな場合を除き、延長可能な期間は含めない(実務対応報告第9項)
(※3)算定にあたっては、運営権者の信用リスクを反映する(実務対応報告第5項)

(3)更新投資に関する会計処理

更新投資のうち、資本的支出に該当する(所有権が管理者等に帰属するものに限る)部分については、更新投資の性質等に応じて以下の会計処理が求められています。

更新投資の性質等

無形固定資産の計上方法

減価償却の方法

1.通常の場合(2.以外の場合)

更新投資を実施した時に、支出額を資産として計上する

(実務対応報告第12項(1))

更新投資を実施した時より、更新投資に係る資産の経済的耐用年数(ただし、運営権設定期間の残存年数以内)にわたり、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法

(実務対応報告第15項(1))

2.以下(ア)・(イ)を満たす場合

(ア)取得時に大半の更新投資の実施時期及び対象となる公共施設等の具体的な設備の内容が、実施契約等で運営権者に提示されている

(イ)上記(ア)の提示により、運営権設定期間にわたって支出すると見込まれる額の総額と支出時期を合理的に見積もることができる

取得時に、支出すると見込まれる額の総額の現在価値を負債として計上し、同額を資産として計上する

(実務対応報告第12項(2))

運営権設定期間を耐用年数とする、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法

(実務対応報告第15項(2))

(4)その他

その他、主に次のような取扱いが定められています。

項目

会計処理の方法

公共施設等運営権の減損損失の認識の判定および測定における資産のグルーピング

(実務対応報告第10項)

原則:実施契約に定められた公共施設等運営権の単位

例外:公共施設等ごとに合理的な基準に基づき分割した公共施設等運営権の単位(※1)

 

プロフィットシェアリング条項(※2)

(実務対応報告第11項)

実施契約においてプロフィットシェアリング条項が設けられる場合、当該条項に基づき各期に算定された支出額を、算定された期の費用(発生時の費用)として処理

(※1)管理会計上の区分、投資の意思決定を行う際の単位、継続的な収支の把握がなされている単位および他の単位から生じるキャッシュ・インフローとの相互補完性を考慮して決定する
(※2)実施契約において、運営権対価とは別に、各期の収益があらかじめ定められた基準値を上回った時に運営権者から管理者等に一定の金銭を支払う条項をいう

開示

(1)表示

本実務対応報告では公共施設等運営権にかかる資産および負債等について次のとおり表示することが求められています(実務対応報告第16項~第19項)。

  • 公共施設等運営権は、無形固定資産の区分にその内容を示す科目(公共施設運営権など)で表示する
  • 更新投資に係る資産は、無形固定資産の区分にその内容を示す科目で表示する
  • 運営権対価を分割で支払う場合に計上する負債は、支払期限に応じて流動負債と固定負債に区分し、その内容を示す科目(公共施設等運営権に係る負債など)で表示する
  • 取得時に、支出すると見込まれる額の総額の現在価値を資産として計上した更新投資(前述主な内容(3)2.)の方法)に係る負債は、支払期限に応じて流動負債と固定負債に区分し、その内容を示す科目をもって表示する

(2)注記事項

本実務対応報告では、次の事項を公共施設等運営権ごとに注記することが求められています(実務対応報告第20項)。

(1)運営権者が実施する公共施設等運営権の概要(公共施設等運営権の対象となる公共施設等の内容、実施契約に定められた運営権対価の支出方法、運営権設定期間、残存する運営権設定期間、プロフィットシェアリング条項の概要等)
(2)公共施設等運営権の減価償却の方法
(3)更新投資に係る事項

  1. 主な更新投資の内容及び投資を予定している時期
  2. 運営権者が採用した更新投資に係る資産及び負債の計上方法
  3. 更新投資に係る資産の減価償却の方法
  4. 更新投資の実施時に更新投資に係る支出を資産計上する場合(前述主な内容(3)1.の場合)、翌期以降に実施すると見込まれる更新投資のうち資本的支出に該当する部分について、合理的に見積ることが可能な部分の内容及びその金額

なお、同一の実施契約において、複数の公共施設等運営権を対象とすることで一体的な運営等を行う場合や、個々の重要性は乏しいものの同一種類の複数の公共施設等運営権全体では重要性が乏しくない場合には、集約して注記することも認められています(実務対応報告第20項)。

適用時期

本実務対応報告は、2017年5月31日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することとされています(実務対応報告第21項)。


このニュースレターは、概略的な内容を説明する目的で作成しています。この情報が個々のケースにそのまま適用できるとは限りません。したがいまして、具体的な決定を下される前に、PwCあらた有限責任監査法人の担当者にご確認されることをお勧めします。