「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第52号)等の公表(ASBJ)

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2017年5月16日 第329号

  • 2017年5月10日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」)は、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」(以下、「本公開草案」)を公表しました。
  • ASBJは、企業がその従業員等に対して権利確定条件が付されている新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の金額の金銭を企業に払い込む取引(以下、当該取引において付与される新株予約権を「権利確定条件付き有償新株予約権」という)に関する会計処理および開示を明らかにすることを目的とする実務対応報告(以下、「本実務対応報告」)の公開草案を公表しました。
  • 本公開草案では、本実務対応報告について、その公表日以後適用することを提案しています。
  • なお、上記に関連して、企業会計基準適用指針公開草案第57号(企業会計基準適用指針第17号の改正案)「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理(案)」が公表されています。

経緯

近年、企業がその従業員等に対して新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の金額の金銭を企業に払い込む取引が見られるようになってきました。当該取引に関する会計上の取扱いは必ずしも明確ではなく、以下のいずれかによる会計処理が行われており、実務上のばらつきが生じていました。

  • 企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下、「ストック・オプション会計基準」)に定めるストック・オプション
  • 企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」(以下、「複合金融商品適用指針」)に定める複合金融商品

2014年12月に開催された第301回企業会計基準委員会において、基準諮問会議よりASBJに対して、当該権利確定条件付き有償新株予約権を発行する企業の会計処理について審議を行うことが提言されました。これを受けて、ASBJにおいて審議が重ねられ、2017年5月10日、これまでの審議をもとに権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理および開示についての本公開草案が公表されました。

主な内容

目的

本公開草案は、企業がその従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引について、すでに公表されているストック・オプション会計基準および企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下、「ストック・オプション適用指針」)を踏まえて、必要と考えられる会計処理および開示を明らかにすることを本実務対応報告の目的とすることを提案しています。

範囲

本公開草案は、概ね以下の内容で発行される権利確定条件付き有償新株予約権を対象としています(本公開草案第2項)。

  • 企業は、従業員等を引受先として、新株予約権の募集要項(行使価格、権利確定条件、数、払込金額、割当日、払込期日等)を決議する。
  • 新株予約権には市場価格がない。
  • 新株予約権には、次のいずれかの権利確定条件が付されている。
    • 勤務条件および業績条件
    • 業績条件のみ(勤務条件は付されていない)
  • 募集新株予約権を引き受ける従業員等は、申込期日までに申し込む。
  • 企業は、申込者から募集新株予約権を割り当てる者及びその数を決定する。
  • 割当てを受けた従業員等は、割当日に新株予約権者となり、払込期日までに企業に一定の金額の金銭を払い込む。
  • 権利確定条件が満たされた場合、新株予約権は行使可能となる。
  • 権利確定条件が満たされなかった場合、新株予約権は失効する。
  • 新株予約権が行使される場合、
    • 新株予約権者となった従業員等は、行使価格に基づく額を企業に払い込む。
    • 企業は、当該従業員等に対して新株を発行するか、自己株式を処分する。
  • 行使されずに権利行使期間が満了した場合、新株予約権は失効する。

適用する会計基準

本公開草案は、企業が従業員等に対して本公開草案の対象となる権利確定条件付き有償新株予約権を付与する場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、当該企業がその従業員等に報酬(※)として付与するものであり、ストック・オプション会計基準に定めるストック・オプションに該当するものとすることを提案しています(本公開草案第4項)。

(※)「報酬」とは、企業がその従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価として、従業員等に給付されるものをいう(ストック・オプション会計基準第2項(4))

ただし、権利確定条件付き有償新株予約権が従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価として用いられていないことを立証できる場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権はストック・オプションには該当せず、これを付与する取引の会計処理については複合金融商品適用指針に従うものとすることを提案しています(本公開草案第4項ただし書き)。

会計処理および開示の概要

権利確定条件付き有償新株予約権は、その付与に伴って従業員等が一定の金額の金銭を企業に払い込むという特徴を除けば、ストック・オプション会計基準の対象であるストック・オプション取引(従業員等が金銭を企業に払い込まない取引)と類似しています。これを踏まえ、本公開草案では、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引については、ストック・オプション会計基準およびストック・オプション適用指針に準拠した会計処理および開示が提案されています。詳細は以下の表のとおりです。

項目

ストック・オプション会計基準

本公開草案

会計処理(付与日から権利確定日まで)

付与に伴う従業員等からの払込金額

(該当なし)

純資産の部に新株予約権として計上する(第5項(1))。[追加]

従業員等から取得するサービス

その取得に応じて費用として計上し、対応する金額を貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上する(第4項)。

(左記に準拠した取扱い)

各会計期間における費用計上額の算定

ストック・オプションの公正な評価額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法等に基づき、当期に発生したと認められる額(第5項)。

権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から付与に伴う払込金額を差し引いた金額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法等に基づき、当期に発生したと認められる額(第5項(3))。

公正な評価額は、公正な評価単価にストック・オプション数を乗じて算定する(第5項)。

(左記に準拠した取扱い)

公正な評価単価の算定

付与日において算定し、条件変更の場合を除き、その後は見直さない(第6項(1))。

(左記に準拠した取扱い)

株式オプションの合理的な価額の見積りに広く受け入れられている算定技法を利用する。失効の見込みはストック・オプション数に反映させるため、公正な評価単価の算定上は考慮しない(第6項(2))。

(左記に準拠した取扱い)

ストック・オプション数の算定

付与されたストック・オプション数から、権利不確定による失効の見積数を控除する(第7項(1))。

(左記に準拠した取扱い)

ストック・オプション数の見直し(条件変更を除く)

権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じた場合、これに応じてストック・オプション数を見直す(第7項(2))。

(左記に準拠した取扱い)

ストック・オプション数を見直した場合、見直し後のストック・オプション数に基づく公正な評価額のうち、その期までに発生したと認められる金額と、これまでに費用計上した金額との差額を、見直した期の損益として計上する(第7項(2))。

権利確定条件付き有償新株予約権数を見直した場合、見直し後の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく公正な評価額から付与に伴う払込金額を差し引いた金額のうち、その期までに発生したと認められる金額と、これまでに費用計上した金額との差額を、見直した期の損益として計上する(第5項(5)【2】)。

権利確定日におけるストック・オプション数の修正

権利確定日には、ストック・オプション数を実際に権利の確定した数に修正する(第7項(3))。

(左記に準拠した取扱い)

ストック・オプション数を修正した場合、修正後のストック・オプション数に基づく公正な評価額と、これまでに費用計上した金額との差額を、権利確定日の属する期の損益として計上する(第7項(3))。

権利確定条件付き有償新株予約権数を修正した場合、見直し後の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく公正な評価額から付与に伴う払込金額を差し引いた金額と、これまでに費用計上した金額との差額を、権利確定日の属する期の損益として計上する(第5項(5)【3】)。

付与に伴う払込金額のうち、権利不確定による失効に対応する部分

(該当なし)

利益として計上する(第5項(6))。[追加]

会計処理(権利確定日後)

権利行使に対する新株の発行

新株予約権として計上した金額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替える(第8項)。

(左記に準拠した取扱い)

権利不行使による失効

新株予約権として計上した金額のうち、当該失効に対応する部分を当該失効が確定した期の利益として計上する(第9項)。

(左記に準拠した取扱い)

会計処理(その他)

権利確定日の判定

勤務条件および業績条件が付されている場合

  • これらの条件のうちいずれかを満たせば権利が確定するときは、当該いずれかの条件を満たした日を権利確定日とする。
  • これらの条件のすべてを満たさないと権利が確定しないときは、これらすべての条件を満たした日を権利確定日とする。

(ストック・オプション適用指針第19項)

(左記に準拠した取扱い)

(明文の規定なし)

業績条件のみ付されている場合

業績を達成するか達成しないか確定する日を権利確定日とする(第7項(3))。

注:表中の【】内の数字は、原文では丸付数字です。

※権利確定条件付き有償新株予約権に関して、上記以外の会計処理については、ストック・オプション会計基準およびストック・オプション適用指針の定めに従うことが提案されています(本公開草案第8項)。
また、開示については、通常のストック・オプションの場合と同様に、ストック・オプション会計基準第16項およびストック・オプション適用指針第24項から第35項に従うことが提案されています(本公開草案第9項)。

適用時期等

本公開草案では、本実務対応報告については公表日以後適用することを提案しています。なお、公表日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引については、本実務対応報告の会計処理によらず、従来採用していた会計処理を継続して適用できるものとすることが提案されています(本公開草案第10項)。

関連する公開草案

本公開草案の公表に伴い、同日付けで、企業会計基準適用指針公開草案第57号(企業会計基準適用指針第17号の改正案)「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理(案)」がASBJより公表されています。

この提案の趣旨としては、本実務対応報告の適用対象となる権利確定条件付き有償新株予約権は、現金のほかに従業員等からの労働や業務執行等のサービスを対価として付与されるものと整理されているため、複合金融商品適用指針の適用範囲には含まれないことを明確化するものです。具体的には、複合金融商品適用指針の範囲(同第2項)を以下のとおりに改正することが提案されています。

改正案

現行(複合金融商品適用指針)

本適用指針は、金融商品会計基準が適用される場合において、払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に適用する。また、本適用指針は、これに関連する新株予約権及び自己新株予約権の会計処理についても取り扱っている。ただし、新株予約権については、現金のみを対価として受け取り、付与されるものに限る。

本適用指針は、金融商品会計基準が適用される場合において、払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に適用する。また、本適用指針は、これに関連する新株予約権及び自己新株予約権の会計処理についても取り扱っている。ただし、新株予約権については、現金を対価として受け取り、付与されるものに限る。

質問事項の概要

質問1

本公開草案では、権利確定条件付き有償新株予約権は従業員等に対する報酬であると整理し、ストック・オプション会計基準に定めるストック・オプションに該当するものと提案しています。この提案に同意しますか。同意しない場合は、その理由をご記載ください。

質問2

本公開草案の会計処理に関する提案に同意しますか。同意しない場合は、その理由をご記載ください。

質問3

本公開草案の開示に関する提案に同意しますか。同意しない場合は、その理由をご記載ください。

質問4

本公開草案の適用時期および経過措置に関する提案に同意しますか。同意しない場合は、その理由をご記載ください。

質問5

その他、本公開草案に関して、ご意見があればご記載ください。

本公開草案に対するコメントの募集期限は、2017年7月10日(月)です。


このニュースレターは、概略的な内容を説明する目的で作成しています。この情報が個々のケースにそのまま適用できるとは限りません。したがいまして、具体的な決定を下される前に、PwCあらた有限責任監査法人の担当者にご確認されることをお勧めします。