税金負担率分析‐電機業界

2017年5月16日

今回は、電機業界7社の連結財務諸表の「税金負担率」と「法定実効税率」との調整項目を分析します。なお、調整項目は、有価証券報告書の連結財務諸表の税金関連に関する注記において示されています。

  • 法定実効税率(法定税率):法人の実質的な所得税負担率
  • 税金負担率(実効税率):(連結PLの法人税などの金額)÷連結PLの税引前損益

【表1】主要電機業界7社の主な調整項目

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有価証券報告書において、各社が記載している調整項目を見ると、上記のような結果となり、5社が「評価性引当金の増減等」を、4社が「海外税率差異」を、税金負担率と法定実効税率の調整項目に挙げていました。
それでは、「評価性引当金の増減等」と「海外税率差異」について詳しく見ていきましょう。

評価性引当金の増減等について

繰延税金資産の回収可能性とは将来の税金費用を軽減する効果を意味し、これは将来において納付すべき法人税等の金額があること、すなわち課税所得があることを前提としています。
そのため、繰延税金資産の回収可能性は将来の収益力に基づく課税所得の十分性などにより判断することとされています。
基本的に、当期および将来における税率変更が見込まれていない環境において、法定実効税率と税効果会計適用後の税金負担率は近似すると考えられますが、その前提は、将来における繰延税金資産の回収可能性が認められ、繰延税金がなんら制約なく計上できることにあります。
よって、その繰延税金資産の回収可能性が認められない場合には、繰延税金資産の計上は認められず評価性引当額として控除されるため、法定実効税率と税金負担率との差異原因となります。
なお、上記で参照した会社のうち米国会計基準やIFRSを適用している会社には関係ありませんが、日本の会計基準では、2016年4月1日以後開始する事業年度の期首より、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」が適用されることとなりました。
従前では監査上の取り扱いである、監査委員会報告第66号で定められた5分類に従って、会計上も繰延税金資産の回収可能性を判断していましたが、2016年4月1日以後開始する事業年度においては、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」に従って繰延税金資産の回収可能性を判断することとなる点に留意が必要となります。

海外税率差異について

電機業界のように海外に多くの子会社を有する場合、外国子会社などが現地の税率で負担した法人税などが連結損益計算書の税金費用として計上されます。
ここで、以下に記載のように日本は、比較的高税率な国とされており、連結財務諸表上の税金負担率は、日本の法定実効税率よりも低くなることが多くなっています。

【表2】各国の法定実効税率 2016年

Country

税率

Country

税率

Country

税率

アメリカ

38.92

ギリシャ

29.00

デンマーク

22.00

フランス

34.43

ニュージーランド

28.00

スロバキア

22.00

ベルギー

33.99

カナダ

26.80

スウェーデン

22.00

イタリア

31.29

オーストリア

25.00

スイス

21.15

ドイツ

30.18

イスラエル

25.00

エストニア

20.00

オーストラリア

30.00

オランダ

25.00

フィンランド

20.00

メキシコ

30.00

ノルウェー

25.00

アイスランド

20.00

日本

29.97

スペイン

25.00

トルコ

20.00

ポルトガル

29.50

韓国

24.20

イギリス

20.00

ルクセンブルク

29.22

チリ

24.00

チェコ

19.00

(出典:OECD HPより)

ここで、上記表1においてNECは、「税金負担率」と「法定実効税率」との調整項目において、海外税率差異がありませんが、これは、以下のとおり、他の電機業界に属する会社と比して、海外売上高が低いためであると考えられます。

【表3】NECの海外税率差異

NEC

売上高(2016年3月期)

金額(百万円)

割合[%]

日本

2,218,012

78.6

北米および中南米

200,549

7.1

中華圏およびアジアパシフィック

264,196

9.4

ヨーロッパ、中東およびアフリカ

138,424

4.9

以上のように、「税金負担率」と「法定実効税率」との調整項目を分析すると、業界特有の事象や、会社特有の事象などを読み取ることができる他、有価証券報告書全体の理解を通じて、調整項目の内容をより深く理解することができます。

今後もさまざまな財務諸表の分析方法を紹介していきたいと思います。

PwCあらた有限責任監査法人
第1製造・流通・サービス部

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