業界別成長度(売上高伸長、従業員数伸長)分析‐広告業界

2017年2月28日

今回は、広告業界の業界別成長度(売上高伸長および従業員数伸長)を分析します。広告業界の国内主要会社である、株式会社電通(以下、電通)、株式会社博報堂DYホールディングス(以下、博報堂)、株式会社アサツーディ・ケイ(以下、アサツーディ・ケイ)および株式会社サイバーエージェント(以下、サイバーエージェント)の4社を対象として、各社の有価証券報告書の情報をもとに、広告業界の売上高伸長度と従業員数伸長度との関係について見ていきたいと思います。

売上高伸長度

まずは、広告業界の成長度に影響すると考えられる要因を検討してみます。
テレビ、新聞、雑誌やラジオなどの既存の広告媒体の売上が伸び悩んではいるものの、インターネット広告やセールスプロモーション分野、またモバイル分野の新たなビジネスモデルが構築され、今後も広告業界は活性化することが見込まれます。

それでは、広告業界の国内主要4社の直近5年間の売上高伸長度をグラフで見ていきましょう。

【表1】売上高5年推移
売上高:棒グラフ、単位:百万円

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(※)電通はFY2014より国際会計基準の適用を開始したため、適用後数値の公表がなされているFY2013以降を記載しています。また、FY2015において決算期を3月から12月に変更したため、前期との比較にあたり、FY2015の有価証券報告書における売上高(9カ月)に、FY2016の四半期報告書の売上高を加算してグラフを作成しています。

売上規模に差はあるものの、FY2011からFY2015にかけて着実に売上を伸ばしていることが分かります。なお、各社のFY2015決算資料によると下記のような事柄が売上高の増加要因として挙げられています。

  • 電通は、世界陸上競技選手権、東京モーターショー、東京オリンピック・パラリンピックなどのスポンサーシップ・セールスなどへの貢献があり、売上高が増加しました。また、クライアントのマーケティング活動のデジタル・シフトが加速し、広告業界におけるデジタル領域に対するニーズも高まり、当該領域における売上高が大幅に拡大しました。電通において、インターネット広告費は、既存の広告媒体(テレビを除く)を上回る規模へと成長しています。
  • 博報堂は、既存の広告媒体の停滞により上期は前年同期を下回ったものの、下期にはテレビにより回復し、既存の広告媒体取引合計は前年同期を上回る形となりました。また既存の広告媒体以外においても、インターネットメディアを中心に売上高が好調に推移しました。
  • アサツーディ・ケイは、マーケティング・プロモーションや製作の減少、医療系広告会社の低迷があったものの、テレビ広告やデジタルメディア広告などの出稿増加でカバーし、大幅な売上高の減少とはなっていないようです(単体では若干の増収)。
  • サイバーエージェントは、スマートフォン広告市場およびスマートフォンゲーム市場の高成長により、スマートフォン関連の売上高が大幅に増加しました。

売上高増加の要因は各社ごとに異なりますが、既存の広告媒体ではテレビが依然として大きな売上貢献要因となっており、また既存の広告媒体以外のインターネット広告やセールスプロモーション分野、またモバイル分野により着実に売上高を伸ばしていることが分かりました。アサツーディ・ケイは直近5年間において唯一売上高の減少が見られますが、FY2011とFY2015の比較においては売上高が増加しており、広告業界の国内主要4社合計の動向としては、売上高増加傾向にあり、広告業界全体が成長しているように見られます。

従業員伸長度

次に、従業員伸長度についてみていきます。

【表2】従業員数5年推移
従業員数:棒グラフ、単位:人

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売上高直近5年間推移で見られるとおり、アサツーディ・ケイ以外の3社は毎期着実に売上高が増加しており、それに伴い従業員数も増加の一途を辿っています。また、サイバーエージェントはFY2011とFY2015を比較すると売上高が112.3%増加と著しく変動しており、従業員数もそれに連動した形で73.25%増加しています。一方で、FY2013とFY2015に唯一の売上高減少が見られるアサツーディ・ケイについては、従業員数についてもFY2012とFY2013に唯一の減少が見られます。ただし、減少が見られるアサツーディ・ケイについてもFY2011とFY2015を比較すると売上高は若干の増加が見られ、従業員数も増加しています。
このように売上高を大幅に伸ばしていくにあたり、従業員の絶対数の確保は必要不可欠であり、サイバーエージェントのように直近5年間で大幅な売上高増加を見せている会社においては、売上高と従業員数との相関関係が顕著に表れていました。

まとめ

上記の比較や分析を通して、一般的には売上高と従業員数との関係には、一定の連動性があることが分かりました。
広告業界の国内主要4社合計での直近5年間推移を観察すると、既存の広告媒体だけではなく、インターネット広告やセールスプロモーション分野、モバイル分野の新たなビジネスモデルの拡大により、売上高と従業員数ともに増加傾向にあり、各社が着実に売上を伸ばしています。
広告業界の活性化に合わせて、広告業界の売上高と従業員数は、今後も一定の相関関係を持った変動をしていくのではないでしょうか。今後の広告業界の新たな広告媒体の模索や、斬新な広告手法により、広告業界のさらなる活性化を期待したいところです。

PwCあらた有限責任監査法人
第1製造・流通・サービス部

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