パイオニア株式会社

週次生販業務システム(SPEED)構築による、グローバルな販売・需給調整・生産・物流各拠点一体のSCM改革

デジタルメディア時代の開拓者であり続けるために、パイオニアでは、グローバル展開する販売・生産・物流拠点間を一元的に週次サイクルで需給調整し、在庫などの情報を可視化することが必要と判断しました。
そこで同社は、在庫の30%削減とキャッシュフローの良化を目標とする“P(パイオニア)-Project”を立ち上げ、週次生販業務システム(SPEED)の構築に取り組みました。
当社は、SPEEDの中核である週次生販在計画システムの構築に参画し、業務設計とSAP社APOをベースとしたシステム設計、開発・導入に従事し、2004年3月に本稼働を迎えました。

デジタルメディア時代における開拓者であり続けるために

「私たちは、できたてのパイオニアをいつでもお届けします」が、P-Projectのスローガンです。社名のパイオニアは開拓者を意味しており、創業以来一貫して最先端技術の開発と、それらの製品への実装を他社に先駆けてきた同社の社風を感じる言葉です。
近年顕著となっているAVエンタテインメントやカーナビゲーションシステムなどを取り巻く環境の変化は、新たなデジタルメディア時代の到来を告げています。しかし、この状況はデジタル関連新技術の黎明期を意味しており、DVDレコーダー、HDDドライブ、デジタルチューナーの混載製品の早期市場投入や、プラズマディスプレイへの追加投資、あるいはGPSや自動運転支援システムなどの知的輸送システムとの連携など、多額の研究費用や買収費用が必要となります。この波に乗り遅れないために、パイオニアでは、従来の投資レベルを超える投資費用が必要と考えていました。
「強固な筋肉体質の組織にしようとスタートしたのがP-Projectです。キーワードは、在庫削減とキャッシュフローの向上です」と、連結情報戦略部長 平石厚氏は語っています。この言葉からも分かるように、パイオニアがデジタルメディア時代の潮流の中で、確固とした「開拓者」の市場ポジションを確保し、それと同時に、切実な投資費用の捻出、スリムなSCMビジネスモデルの構築を目指そうとする強い意気込みが伺えました。

P-Project成功の鍵はグローバルに全社共通理解の醸成

「激変する市場環境に対し、日々の事業評価と俊敏かつ柔軟性に富むプロセスを通じて、各事業がお客様へより多くの価値をお届けすると同時に、連結在庫ミニマム/フリー・キャッシュ・フロー向上を実現し続ける企業グループとなる」P-Projectは、この活動ビジョンの下に発足し、2001年10月の全体構想から2年半で本稼働させることができました。
その大きな成功要因は、P-Projectのコンセプトを海外販社、日本のグローバル需給、海外のパートナーを含めた生産・物流関係者で徹底共有し、業務運用ルールの定着と週次運用サイクルの同期化を進めたことでした。また、コンセプト説明会や報告会においては、SPEED、CS(Customer Satisfaction)、COLLABORATION、CHANGE、COST DOWN、 CASH FLOWの6つのキーワードが幾度となく紹介され、その意味が説明されました。
連結情報戦略部SCM推進グループリーダの山岡朗氏は「SCMは道具ですから、改革意識を持っていかに活用していくかが重要です。構造改革を達成することで、お客様に素早く商品をお届けして利益を上げるという最終目標を、常に意識していなければなりません」と語っています。
これはまさに、グローバルに全社共通意識を確保する大切さを説いていました。またパイオニアの社長・伊藤周男氏自らも、P-Projectは全社プロジェクトであることを会議で直接アピールするなど、社員のモチベーションを向上させました。
SCMについては競合他社もすでに取り組んでいましたが、それは1事業部内や、日本国内だけなどビジネスラインや生産レイアウト的に限られた範囲でのプロジェクトであることがほとんどでした。しかしパイオニアでは、すべてのビジネスラインや複数カンパニー製品を生産する工場、海外販売拠点と同時並行でプロジェクトを推進しました。
これほど大きなプロジェクトを全社員が共通意識の下に取り組むことは一筋縄ではいかず、本稼働させることは難易度が高く、画期的なことでした。これに加え、プロジェクト期間中はSARSによる渡航禁止などのトラブルも発生するなど悪条件も重なりましたが、サイバー会議やロータス・ノーツなどの活用を通じて対処し、無事成功させることができたのでした。
しかし、現実には、調整するにも対象部門や関係企業が広範囲に及んだため、全社的な共通理解の醸成にはかなりの時間と労力を要しました。特に、月単位から週単位で仕事をするという新しい業務設計や、グローバルにSAP社SCM計画パッケージAPOを導入するというシステム設計に関しては多くの苦労がありました。
まず「週単位で仕事をするとはどういうことか」の理解から始まり、関連部門間の調整事項が多方面に渡りました。プロトタイプ・アプローチなどの知恵を織り込みながらも、エンドユーザーの正しい理解を得るまでには、多くの時間を要しました。システムの設計・構築においても、要件決定からADD-ON開発、総合テスト、ユーザーテストまでは実質9か月で完了しましたが、ユーザーテストにおける仕様理解、生産・物流実績などのデータ精度向上は苦心したタスクでした。

週次生販精度向上とSCM改革・改革意識の継続的推進が大切

パイオニアの従来の生販調整は、月単位で販売、グローバル需給調整、生産、部品調達、物流の各拠点がそれぞれ調整を行うものでした。生販確定は主に
2.5カ月確定で、見直しのチャンスは月2回という即応性に欠けるものでした。
今回の週次生販では、(1)毎週、生販を見直す、(2)生産確定までのリードタイム・工場でのリードタイムを短縮し、販売部門が欲しい製品をなるべくギリギリのタイミングで生産する、(3)販売・出荷・生産プロセスを週単位で管理する、という考え方を基本としていました。その上で各プロセスに要するリードタイムを見直し、プロセスの所要時間や能力値を一元管理。短時間に需要と供給の連鎖情報を計算することで、週次・納期確約型生販を目指していました。
また、SPEEDは、グローバルに各部門・関係会社が各拠点システムとHUBと呼ばれるインターフェース・ゲートウエイとの連鎖を可能にしたことで実現されました。
この運用には、短サイクルの業務調整が必要であり、時差を考慮した1週間の業務フローを決めました。各曜日単位で遂行すべき業務が決められているので、1業務の視点では、日次化、タイムスケジュール化が導入されているのです。つまり、毎日の業務を確実・正確に遂行すること、そして、システム面においては、毎日確実にその日の情報を処理することが、今回の週次生販を遂行していく上で最も重要な点でした。
また、週次生販システムのほかに、製品の連結在庫および連結売上高を日次で捉えられる仕組みが完成しました。これにより、毎日、全世界の在庫状況をモニターできるようになりました。今後はSPEEDの仕組みを活用し、グル-プ全社員が主体的に顧客満足度の向上・ミニマム在庫の実現を図っていくことでパイオニアグループビジョン達成の一助になることが期待されます。
プロジェクト責任者 パイオニア取締役 清水孝一氏が「全社員がこの仕組みを理解し習熟して、効果を出していくことを期待しています」と語る一方、「仕組みが完成しても使う人の魂が入らなければ在庫は減りません。業務面での恒常的レベルアップ活動、あらゆる工程のリードタイム短縮、業務改革に終りはありません」と、平石氏は展望しています。
パイオニアは、このP-Project成功を1つの経過点に、今後も“デジタルメディア時代の雄”としてさらなる飛躍を目指しています。

※社名・役職などは掲載当時のものです。