株式会社講談社

コンテンツビジネス強化、データ標準化を実現する統合経営情報基盤を構築

講談社では、長年運用してきたホストコンピュータの処理能力の限界、個別最適化された情報システム群に起因する課題解決を目指し、基幹システムの刷新を決断。会計と経営管理にフォーカスした新たな情報システムの構築プロジェクトを立ち上げ、2006年12月に本稼動を開始しました。
コンサルティングパートナーとして参画した当社の提案に基づき、最新テクノロジーの採用により取引先マスタの統合、会計業務プロセスの標準化など、業務と経営管理情報の「データ標準」を実現しました。データの重複や不整合といった従来の課題解決に加え、講談社が目指すコンテンツ価値の最大化に向けたマネジメント基盤を確立しました。

経営情報管理に求められる「スピード」と「正確性」

出版業界でいち早くコンピュータを導入し、積極的な業務活用を推進してきた講談社。しかし近年は、個別最適の観点で構築してきた既存の情報システム群の複雑化に伴う、経営や業務上のさまざまな課題に直面していました。たとえば業務に必要なデータがすぐに見つからない、売上や原価、経費が確定するまでに時間がかかるといった状況は効率的な業務運営の足かせとなり、またデータ品質についても、取引先マスタや商品マスタが複数存在することで、データの重複や不整合などが発生していました。
こうした課題に対して講談社では、「スピード」と「正確性」という観点からデータベースの一元化が不可欠と判断し、その解決手段としてERPに着目。経理をはじめ編集、ライツ(版権)管理、営業といった複数部門のメンバーが、ERPの有用性や経営管理のあり方などについて検討を開始しました。
この結果、ERPによる基幹システム刷新を決断した講談社は、経営企画室内に全社的なIT企画を統括する「新システム推進室」を新設し、まず会計と経営管理にフォーカスしたシステム刷新という方針を明確化。複数ベンダーの提案を検討した上で、SAP ERPを中核とした当社の提案を採用しました。
今回の導入プロジェクトで中心的な役割を果たした株式会社講談社の経営企画室 新システム推進部 室次長兼部長の上原朗久氏は、パートナー選択のポイントとして会計分野の高い専門性やSAPソリューションの豊富な導入実績を挙げた上で、「単にERP導入によるシステム刷新ということではなく、まず会計と経営管理にフォーカスするという当社の方針や短期導入という要望を理解した上で、経営情報基盤の確立に向けて、高いコンサルティング力を提供してくれると判断しました」と語っています。

「データ標準」のマネジメント基盤でコンテンツ価値の最大化を目指す

次に講談社は、当社も参画した構想策定フェーズで、 まず「データ標準」という基本コンセプトに基づく、具体的な施策についての検討を進めていきました。データ標準の目的は「経営管理情報」と「業務」をデータの側面から定義し、標準化することにあります。このことは、同社が当初から目指していたデータベースの一元化からさらに踏み込んで、従来の課題解決に加え、今後のビジネス展開に向けた経営管理基盤の確立を図る狙いがありました。
特に同社が重視したのは、製品やコンテンツを軸にした情報の可視化による経営のライフサイクルマネジメントです。従来の情報システムで行っていたのは、出版やライツ、広告といった部署別の実績把握や管理のみで、コンテンツ単位での集計には対応できていませんでした。
「当社に必要なのは、書籍や雑誌単位ではなく、原作から書籍、映像、キャラクター商品といった『コンテンツの価値を最大化する』という視点でのビジネス戦略です。そのためには、これまでの部門ごとの収支管理から脱却し、コンテンツ単位で状況を把握できる仕組みに移行する必要があります。そのためにはコード体系や業務運用ルールを全社で共通化し、各部門に複数存在している取引先マスタ、商品マスタを統合することが不可欠でした」と上原氏は語っています。
当社では、こうしたニーズに対して、マスタ統合ツールやEAIツールによるERPと既存情報システムとの統合提案を行い、最終的に新システムは、次のようなソリューションで構成されました。12カ月の短期導入が可能であり、かつ効果的なシステム投資という観点から、いずれも最新テクノロジーを採用した先進的な取り組みといえます。

  • ERP:SAP ERP(財務会計/管理会計)
  • BI:SAP NetWeaver Business Intelligence(SAP NetWeaver BI)
  • マスタ統合/管理:SAP NetWeaver Master Data Management(SAP NetWeaver MDM)
  • EAI:SAP NetWeaver Exchange Infrastructure(SAP NetWeaver XI)
  • 電子承認ワークフロー:intra-mart(NTTデータ イントラマート)
講談社では、販売や流通などのシステムも統合していく将来構想を描いていますが、まず会計と経営管理にフォーカスした基盤を整備し、その後の拡張は実際の運用を通じて判断するという方針から、本稼働の目標を1年後に設定しました。

会計業務プロセスの変革も並行し12カ月の短期導入を実現

基本構想の策定を終えた講談社では、2005年12月から本格的にプロジェクトをスタート。全社的な視点に立ったデータや機能の整合性確保を目的にPMO(Project Management Office)を設置し、新システム推進部のメンバーを中心とした体制で作業を進めていきました。
プロジェクトでは、データ標準に加えて原価計算と業務効率化にも焦点を当てて構築作業を推進しました。そこでのポイントは、正確なコスト把握のための原価計算ルールの確立に代表される業務プロセスの標準化にありました。戦略的な経理管理を実現するためには、まず会計業務全般の見直しが不可欠という認識からです。
たとえば、月刊誌を創刊した場合、従来の原価計算は月次処理で対応していたため、創刊号の実績を数値として把握できるのは、すでに次号以降の作業が進んでいる翌月の半ばという状況にありました。上原氏は、「雑誌は生き物ですから、当社としてはできるだけ早く正確に実態を把握し、適切に対応しなければいけません。多品種のアイテムを扱っている当社には、それら1つひとつに対して、日々の状況を正確に追える仕組みが必要でした」と強調しました。そこで、SAP ERPの標準機能に合わせて原価入力を日次処理に変更するなど、会計処理プロセスの変革も並行して推進しました。
「経理部門としてあるべき姿を実現するための具体的な提案や、ユーザの理解度に応じた効果的なトレーニングの実施など、コンサルタントのプロジェクトへの貢献は高く評価しています」と上原氏は語っています。こうした活動を経て、新システムは当初の計画どおり、2006年12月に本稼働を開始しました。

さらなるビジネス拡大に向けて情報活用に向けた取り組みを継続

新システムの本稼働から約1年が経過した現在、講談社ではすでにintra-mart(電子承認ワークフロー)導入による各種承認プロセスの標準化や迅速化といった効果が表れ始めました。Bl(Business Intelligence)という観点からも、SAP ERPを中核とする新システムのもとで、経営戦略の策定・遂行、業務の支援という2つの側面で、蓄積されたデータ活用に向けた取り組みが引き続き進められています。さらに携帯配信、雑誌と連動した通販やコミュニティサイト、ゲームソフトといったコンテンツビジネスの拡大に向けては、すでにコンテンツの2次利用を支えるライツ管理システムの構築に着手しています。
上原氏は、「コンテンツ価値の最大化という面での効果は今後の取り組み次第ですが、それに耐えうる基盤は構築できたと思います」と強調した上で、今後のポイントについては「経営という観点では年間の事業計画や予算計画とどう組み合わせていくか、業務という観点では社内情報だけではなく、書店や取次といった社外の情報をどう取り込んでいくかが重要になります」と語っています。
当社が提案した「データ標準」のコンセプトにより経営情報の可視化や業務の標準化、オペレーションの効率化を実現した新基幹システムは、コンテンツビジネスを推進する講談社のライフサイクルマネジメントを支える強力な基盤となっています。

※社名・役職などは掲載当時のものです。