プライスウォーターハウスクーパースHRS 組織・人材マネジメント コラム

連載 「戦略人材マネジメント基礎講座」
第7回 成果主義とは何か

'05.05.16

プライスウォーターハウスクーパースHRS株式会社
マネージング ディレクター
山本 紳也


今回は、「成果主義とは何か」について考えていきます。

- 成果主義とは当り前の考え方

第6回「うまくいかない成果主義」では、いくつかの企業の失敗例を参考に、なぜ成果主義がうまくいかないかについて考えました。しかし、そもそも成果主義とは何なのでしょうか。辞書で成果主義(「成果」と「主義」)を調べると、「でき上がった結果の出来栄え(=成果)を、常に重要視する方針(=主義)」と読み取れます。そこで、社長の立場で考えてみてください。組織活動において「でき上がった結果の出来栄え(成果)を重要視すること」は当り前の話ではないでしょうか。これに正面から異論を唱える人はあまりいないのではないでしょうか。しかし、実際には「成果主義」のあり方やその良し悪しが色々な形で議論されているということは、成果主義の捉え方が一致していないといえます。


- 成果の定義は仕事により異なる

「でき上がった結果の出来栄え=成果」の捉え方は職種や仕事により異なります。例えば営業では売上結果が常に成果であり、その成果を測定することは比較的容易といえます(実際には前提や環境要因を考えるとそれほど簡単ではない)。しかし、実際には、成果を測ることの難しい仕事の方が多いはずです。例えば、モノを作る部署では他部署と仕事のフローが連鎖しており、単体で成果を評価することが難しくなります。例えば、設計部では設計が仕上がることが成果であるはずですが、製造技術に言わせれば「量産に乗らないような設計を上げておいて何が成果だ」。営業から言わせれば「売れないものを作っておいて成果とは、設計も製造もふざけるんじゃない」となるかもしれません。また、研究開発部門では最終形にならなくても途中結果やプロセスが成果と評価されることもあるでしょうが、それを見た営業は「開発はやっていれば良いんだから楽だよな」と言い、逆に開発は「我々の成果のおかげで結果の出ている営業は頭も使わないで売ればいいんだから楽だよな」と返します。

仕事が異なれば求められる成果の定義も異なるのは当然です。では、なぜ上記のような議論が起こってしまうのでしょうか。上記議論の発端は一番の肝心な視点が抜け落ちていることにあります。本来、会社の中では、どの部門でも、最終的に目指しているゴールは同じはずでしょう。会社の価値向上のために、或いは会社の定義する成果に合致しているかという「組織の視点」が抜けて成果を語ることに意味はありません。社員全員が会社の目指している方向性を理解し、統一の目的を意識した上で、行動することにより、初めて、結果は本来の「組織の求める成果」としての意味を持つことになります。まず、この視点の下で成果主義を議論する必要があるのです。「何が成果なのか」を十分議論し、共通認識をもつ努力が欠けているのではないでしょう。

さらに、成果主義の目的という視点で考えると、もうひとつ重要な視点があります。それは、過去と将来という「時間軸の視点」です。評価とはどのように厳格に捉えても、それは結局、過去の振り返りであり、これまでの議論は、如何に過去の実績を公平に評価し公平な処遇を与えるかという過去のアウトプットに対する清算の議論でしかありません。しかし、真の成果主義の目的は、過去ではなく将来のはずです。これは、人材開発であり、将来の生産性向上に他なりません。過去の成果評価と処遇を公平にすることにより、モラールや短期的なやる気を維持することはできても、決して将来への長期的なモチベーションやコミットメントを高められるものではありません。会社の将来像を描き、その実現のために必要な能力を定義し、本人の能力向上と将来のキャリアというストーリーを描けることにより、初めて将来へのモチベーションが醸成されるのです。これをなくして、過去の清算だけでは成果主義は成立しません。


- 成果主義の成否は現場できまる

なんとなく、成果主義の成否の鍵は見えてきたでしょうか。成果主義人事の成否は、決して制度ではありません。如何に会社の目指すものが議論して共有されているか。そしてそれを現場のマネジャーが如何に部下に伝え、一緒に取り組んでいるか。成果主義の成否は制度の出来不出来の問題ではなく、運用の問題なのです。成果主義の成否は現場のマネジメントで決まるのです。同じ目標管理制度を使っていても、制度の有効性や成果がでるかどうかはマネジャーによって異なります。ろくに部下の相談にものらず、部下の書いた目標設定を確認もせずに判子を押し、普段は部下の仕事など全く見てもいないのに、評価に時期になると突然現われAだのBだのと理屈だけを並べる。勿論、評価面接など形だけで、部下の言い分も聞かない。これが成果に繋がるわけもなく、これで成果主義なわけがありません。これでは、例え結果が正しくても、部下の納得性はないだろうし、能力向上や更なる成果にも結びつくとは思えません。

他方、目標設定の時期から十分に時間を使い部下とコミュニケーションを繰り返し、真に部署のため(会社のため)にも本人のためになる目標を設定しようと努力をし、そして、それがどのようにすれば達成できるかの仕事のストーリーを部下と一緒に知恵を出し合い考える。目標を設定した後も、日常業務の中で常に部下をフォローし、一緒に悩み考え、一緒に目標を達成しようとする。これが成果主義を実践するマネジャーの姿でしょう。こうなると、最後の評価はお互いの最終事実確認程度になり、評価面接では良かったところ悪かったところをお互いに振り返り、今後の方向性やキャリアについて一緒に考える余裕もでます。これが本当の成果主義人材マネジメントなのです。目標設定から評価行動を通して企業業績の向上に貢献し、人を育成し、さらに次の成果へつなげる。この連鎖を続けることこそ、成果を出しつづける仕組みであり、真の成果主義といえるのです。


(TPIS 2004年7月号掲載)


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